大会長挨拶

大会テーマ
医療機器学サイコウー再考・再興・最高ー
医療機器の多様性拡大に向けた課題と展望
第101回日本医療機器学会大会
大会長
本田 宏志
株式会社ニチオン
代表取締役社長
このたび、第101回日本医療機器学会大会並びに併設展示会「メディカルショージャパン&ビジネスエキスポ2026」を千葉・幕張メッセにて、2026年6月4日から6日までの3日間開催いたします。
大会長として、皆様をお迎えできることを大変光栄に存じますとともに、医療機器分野の発展にご尽力されている関係者の皆様に、心より敬意と感謝を申し上げます。
さて、本大会のテーマは、「医療機器学サイコウ-再考・再興・最高-」であります。
私はこの「サイコウ」を思考するにあたり、今一度本学会の原点である創立趣旨に立ち返りました。本学会誌「醫科器械學雑誌第1巻第1号(大正12年発行)」の巻頭において、当時の医学博士田代義徳先生が本学会の有り様を以下のように論説されています。
“自ら一種の階級様なるものを作りて、他方面の交通を缺く(かく)を以て、その専門とする”医学者と、“売込商人として努めて自ら低くするの風を装うも、その製作者たる職工に対するときは、態度豹変一廉(ひとかど)の資本家気質を発揮する”販売者に加えて、“尋常一様の筋肉労働者と看做(みな)されて最も薄き待遇に甘んぜざる”製作者、この三者が“相携へて医学上の器械製作の改良進歩を圖(はか)らんとするは~(中略)~相互の人格平等なるを認識して、唯(ただ)その異なれるは従事する方面のみなるを覚りて、相依り相扶けて器機の進歩改良には、三者同一の位置に立ちて努力せられんことを希う”と。
この時代、医学者、今でいうところのアカデミア、医療機器商家、職工の三者が一座となって医療機器の進歩改良に手を携えることは極めて希だったのではないでしょうか。それほどまでに進歩改良への渇望と情熱があった証左だと想像します。また、医療機器学の未来を拓くのに必要なのは型でなく思想だと感じた次第です。
改めて、本大会テーマ「医療機器学サイコウ-再考・再興・最高-」ですが、「再考」とは、医療機器の倫理的配慮、実用化、 改良改善、安全性確保といった根本的価値に立ち返り、産学連携のもと、最新の医療技術を患者に提供する使命感と社会貢献のマインドを見つめなおす契機とするものです。「再興」には、学術委員会による医療機器の製造・販売・使用における患者安全と医療の質向上を目的とした活動をもとに、より高次の付加価値を生み出し還元できるような質の高い交流の場となるよう再構成していきたいという期待を込めています。「最高」は、最新の医療技術や研究動向の学び、研究者との交流、ご自身の研究発表のフィードバックの機会、そしてモチベーションを向上し続けることで、文字通り「医療機器学サイコー!」と叫ぶ理想を象徴しています。
我々は、患者を中心に、医師・看護師・臨床工学士・滅菌技士をはじめとする医療従事者と、医療機器の供給元である医療機器販売者、業務受託サービスの医業委託者、医療機器製造者、医療機器の研究開発に携わる理工学研究者とが、臨床の現場課題をベースに思考と創意工夫を重ねることで医療の改良進歩を図ってきました。ここでいう改良進歩とは、社会実装にほかなりません。
しかし現実には社会実装のハードルは極めて高い。我々はgood - to ー haveは作れますが、社会実装に至るためにはこれでは足りず、揉んで、揉んで、叩いて、叩いてを繰り返し、must - haveの域にまで昇華させなければならない。これが学会創立当初の意志であり本分だったのではないでしょうか。本学会から医療機器開発のネットワークを拡げ、その社会実装を促進するエコシステムとして機能することこそが、副題にあります医療機器の多様性拡大に向けた課題を克服し、次の展望へと向かう筋道になると考えるのです。
つきましては、本大会では、新技術の開発はもとより、臨床課題の研究、医療機器保守・管理、薬事・法制化、教育・人材育成など、多岐にわたる領域からの演題を広く募集し、ご発表を歓迎いたします。
本大会が、学会会員や参加者一人ひとりの知識と情熱の交差点となり、医療機器学のさらなる飛躍に寄与する場となりますよう祈念し、皆様のご参加とご支援に、あらためて深く感謝申し上げますとともに、幕張の地にて、多くの皆様とお目にかかれますことを、心より楽しみにしております。