講演情報

[JO1-04]ホルマリン固定時の膝屈曲角度が膝窩部関節包の形態学的評価におよぼす影響に関する研究

*菅原 昌浩1、梛 千磨1,3、池尾 諒真1、佐藤 勇太2、小野 武也1,2 (1. 県立広島大学大学院 総合学術研究科 生命システム科学専攻、2. 県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科、3. 大阪保健医療大学 保健医療学部 リハビリテーション学科)

キーワード:

膝窩部関節包、ホルマリン固定、形態学的評価

【はじめに、目的】関節拘縮は、関節の不動などによって生じる関節可動域制限を特徴とする病態であり、徒手理学療法の治療対象の一つである。関節拘縮の発生要因は、筋原性因子と関節原性因子に分けられる。関節原性拘縮では、関節包が関節可動域制限に関与する組織と考えられている。関節包は内層の滑膜と外層の線維膜から構成されており、その病態解明には関節包の形態学的評価が重要である。先行研究では、膝窩部関節包の形態を評価する指標として、滑膜長および線維膜長が用いられている。形態学的評価では、摘出組織をホルマリン固定した後に組織学的評価を行う。しかし、関節包の形態は膝屈曲角度によって変化するため、ホルマリン固定時の膝屈曲角度が評価結果に影響する可能性がある。そのため、ホルマリン固定時の膝屈曲角度が滑膜および線維膜の組織像、滑膜長および線維膜長に影響をおよぼすと、関節拘縮による形態変化との区別が困難となり、形態学的評価の妥当性が損なわれる可能性がある。しかし、ホルマリン固定時の膝屈曲角度が関節包の形態学的評価におよぼす影響は明らかにされていない。そこで本研究の目的は、ホルマリン固定時の膝屈曲角度が滑膜および線維膜の組織像ならびに滑膜長、線維膜長におよぼす影響を明らかにすることである。

【方法】Wistar系雄ラット6匹を対象とした。安楽死後、ラットの後肢を股関節で離断して摘出し、各個体の左膝を60°屈曲位、右膝を150°屈曲位となるようにアルミ板で固定した。その後、10%中性緩衝ホルマリンに24時間浸漬し、膝窩部関節包の組織切片を作製してMasson's trichrome染色を行った。60°屈曲位および150°屈曲位における滑膜および線維膜の組織像を観察し、組織の折り重なりの有無を評価した。滑膜長および線維膜長は、大腿骨付着部から脛骨付着部までの組織表面に沿った距離をImageJで測定した。滑膜長および線維膜長を測定し、解析可能であった測定項目について60°屈曲位と150°屈曲位を対応のあるt検定で比較した。

【結果】滑膜は150°屈曲位で折れ曲がりを認めたが、折り重なりは認めなかった。滑膜長は60°屈曲位で5004±463 μm、150°屈曲位で4925±755 μmであり、有意差を認めなかった。一方、線維膜は150°屈曲位で折り重なりを認め、組織表面の連続性を確認できなかったため、線維膜長は測定できなかった。

【結論】本研究の条件では、滑膜長はホルマリン固定時の膝屈曲角度の影響を受けなかった。一方、150°屈曲位では線維膜長を評価できなかったことから、線維膜長の評価法についてさらなる検討が必要である。

【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、県立広島大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号:第25A-002号)。