講演情報

[JO3-04]自覚的肩こり感に関連する因子の性差:機械学習による探索的検証

*酒林 花菜子1、幸本 夏奈2、兒玉 隆之3、宮﨑 純弥3、重藤 隼人3 (1. 関西メディカル病院、2. 愛仁会リハビリテーション病院、3. 京都橘大学)

キーワード:

肩こり、性差、SHapley Additive exPlanations

【はじめに、目的】
 肩こりは「後頚部から肩甲骨、肩周囲の不快感、鈍痛、重苦しさやそれに伴う筋の緊張」と定義されており、自覚的所見である痛みや重苦しさと他覚的所見である筋緊張の増大が臨床所見としてみられる。肩こりは本邦において有訴者率が高く、特に女性の有訴者が多い症状の一つである。肩こりに関連する因子として、不良姿勢、睡眠時間、Visual Display Terminals(VDT)作業時間など様々な因子が報告されている。しかし、性別による肩こりに関連する因子の違いは十分に明らかにされていない。そこで本研究では、肩こり関連因子の性差に着目し、機械学習手法を用いて探索的に関連因子を検証した。

【方法】
 健常若年者40名(年齢20.7±0.6歳)を対象者として、肩こり感と痛みをNumerical Rating Scale:NRSを用いて評価した。肩こり症状に関連する性別、BMI、VDT作業時間、睡眠時間、性格特性、中枢性感作関連症状(Central Sensitization Inventory:CSI)を質問紙にて聴取した。さらに他覚的所見として、僧帽筋上部の筋硬度、頭蓋脊椎角(craniovertebral angle:CVA)、国際10-20法に基づきFp1、Fp2の脳波活動、容積脈波による自律神経活動を評価した。脳波及び自律神経活動は安静座位で5分間計測し、高速フーリエ変換を用いて周波数解析により各周波数帯域のパワー値を算出し、脳波はFp1,Fp2のα/β比、自律神経は自律神経のバランスとしてLF/HF比を指標とした。統計解析は、機械学習の解釈手法であるSHapley Additive exPlanations(SHAP)解析を行い、目的変数の寄与度を示す各説明変数のSHAP値を算出した。目的変数に自覚的な肩こり感、説明変数にその他の評価項目を設定した。モデルは全被験者モデル、男性モデル、女性モデルの各モデルで検証した。

【結果】
 全被検者モデルでは、疼痛強度、CSI、VDT作業時間が高いほど自覚的肩こり感を高める方向への寄与が認められた。男性モデルでは、疼痛強度が肩こりスコアに対して最も大きな寄与を示し、次いでVDT作業時間、CSIが高い寄与を示した。女性モデルでは、CSIが最も大きな寄与を示し、次いで僧帽筋上部の筋硬度および自律神経バランス(交感神経優位活動)が高い寄与を示した。また、脳波活動ではFp2におけるα/β比が低いほど自覚的肩こり感を高める寄与が認められ、女性では脳波・自律神経活動の関与が認められた。

【結論】
 本研究より男性では肩こり部位の疼痛、VDT作業時間、肩こり部位の筋硬度など、身体的要因が自覚的な肩こり感に対して相対的に大きく関連する可能性が示唆された。一方、女性では中枢性感作関連症状や自律神経バランス、脳波活動など、神経系に関連する指標の関連が相対的に大きい可能性が示唆された。以上のことから、肩こりに関連する因子には性差が存在する可能性があり、性差を考慮した肩こりの評価およびマネジメントの必要性が示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
 京都橘大学倫理委員会承認後(2023-03)、対象者には本研究の発表についての説明を行い、同意を得ている。