講演情報

[JS1-03]交通外傷による下腿損傷後の恐怖回避行動とアロディニアに対し触覚刺激と視覚フィードバックを用いた一症例

*村山 寛和1,2、北村 泰三3、永野 雄大4、藤谷 順子1 (1. 国立国際医療センター、2. 東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 理学療法科学域、3. 株式会社MEDICAL COLOR、4. 足立慶友整形外科)

キーワード:

アロディニア、触覚刺激、視覚フィードバック

【症例紹介】
30歳代女性。バイク走行中に軽トラックと接触し左下腿内側部に挫創を生じた。筋膜・皮膚の縫合後、患肢の安静および免荷を指示されたが、挫創部に壊死を認め2度に分けて植皮術を施行。受傷時に挫創部を目撃したことを契機に、受傷場面のフラッシュバック、睡眠障害、患肢への強い恐怖心などの心的外傷関連症状が出現。植皮術後11日(入院28日後)より荷重が許可され、理学療法を開始した。
【評価とリーズニング】
初期評価では、「左足を見ることが怖い、触れない」「医療者に左足を触れるのが怖い」と訴えた。荷重時痛Numerical Rating Scale(NRS)9/10、筆による軽擦でも突き刺さるような痛みと表現された。Pain Catastrophizing Scale(PCS)45/52点。Tampa Scale for Kinesiophobia-11(TSK-11)39/44点。しびれは足部全体に認めた。左足関節他動背屈:疼痛により-40°。MMT:左足関節底背屈0、足趾伸展・屈曲ともに0。表在感覚:母趾4/10、小趾4/10、母趾球2/10。母趾運動覚:8/10。Semmes-Weinstein monofilament(SWM)では小趾のみ6.65を知覚し、母趾側では知覚できなかった。振動覚:内果部で左右ともに10秒。左下腿の描画課題では、左下腿内側部が欠損されていた。挫創部のため神経伝導検査は実施できなかったが、深部感覚が比較的保たれており、末梢神経の完全断裂は否定的と判断した。神経症状とアロディニアを認めたことから、神経障害性疼痛が主な疼痛機序であると考えた。加えて、植皮術後早期であったため、挫創および手術侵襲に伴う侵害受容性疼痛の併存も示唆された。さらに、心的外傷関連症状、破局的思考、運動恐怖、身体認識の変容がこれらの疼痛を増幅している可能性があると推察した。
【介入内容と結果】健側下腿をiPadで撮影し左右反転させた映像を患側下腿として提示。患肢を目視可能となった段階で患者自身による接触から開始し、療法士による触覚刺激へ移行した。触覚刺激は筆による軽擦、軽い圧迫、撫でる刺激の順に段階づけ、最終的に皮膚および筋腱移行部への徒手的介入を行った。さらに、健側の足関節背屈運動を左右反転した動画による視覚フィードバックと物理療法を併用し患肢の背屈運動を促した。最終評価:荷重時痛NRS4/10。左足関節他動背屈5度。MMT:左足関節背屈0、底屈1、母趾伸展0、母趾屈曲1、第2~5趾伸展・屈曲1。SWM:母趾・小趾・母趾球6.65。両松葉杖歩行可能となり自宅退院となった。
【考察】視覚フィードバックと段階的な触覚刺激により、患肢への恐怖回避行動とアロディニアが軽減し、身体認識の再構築が促された可能性がある。その結果、運動・荷重への許容範囲が拡大し、歩行獲得に至ったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】本発表はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に本発表の趣旨を説明し同意を得た。