講演情報

[JS1-04]陳旧性ACL断裂、膝軟骨損傷に対してQT腱を用いたACL再建術および自家培養軟骨移植術後の治療経験

*佐々木 杏夏1、永井 教生1、天鷲 翔太1 (1. 京都下鴨病院)

キーワード:

前十字靭帯再建術、自家培養軟骨移植術、膝伸展筋力

【症例紹介】
40歳代男性である。20年前のサッカー中に右膝に疼痛が出現し、他院で半月板損傷と診断されたが、未治療でサッカーを継続していた。昨年のサッカー中に疼痛が再燃し、当院で右膝の陳旧性前十字靭帯(以下ACL)損傷、大腿骨内側顆および滑車部軟骨損傷と診断された。手術では大腿四頭筋腱(以下QT腱)を用いたACL再建術(以下ACLR)に加えて、大腿骨内側顆および滑車部の自家培養軟骨移植術(以下ACI)が同時に行われた。本邦では、本症例のような同時手術の報告は少なく、プロトコルも確立されていない。そこで術後の構造的特徴や危惧される点、後療法で工夫した点を報告する。
【評価とリーズニング】
術前評価では、階段降段時と歩行時に膝前内側部痛の訴えがあり、大腿骨内側顆の関節面、膝窩筋腱を含めた後外側支持組織(以下PLS)および膝蓋下脂肪体(以下IFP)に圧痛を認めた。右膝伸展可動域は−7°、最終伸展域で膝窩外側部の疼痛とPLSの硬さ、IFPの疼痛を認めた。また、大腿周経で関節水腫と大腿四頭筋の萎縮を認めた。術後評価では、active SLRはextension lagが20°あり、右膝伸展可動域は介入前で−10°、介入後で−5°まで拡大したがリバウンドを繰り返していた。後療法では、移植軟骨を保護するため術後5週間の荷重と膝関節屈曲30~60°における大腿四頭筋の積極的な収縮が制限された。またleg extensionも再建靭帯が緩む観点から行えないため、膝伸展筋力のトレーニング方法が限られた。
【介入内容と結果】
大腿四頭筋の筋力訓練は内側広筋に電気刺激を加えながらsettingで収縮を促すことを中心に実施し、伸展可動域制限に対しては術前から認められたPLSやIFPの柔軟性や滑走性を改善する目的で介入した。退院時には、active SLRのlagが減少し、膝伸展可動域はリハビリ後で−3°まで改善した。歩行では膝折れや荷重時痛を認めなかった。
【考察】
ACL損傷は変形性膝関節症を進行する要因であり、2025年5月からACIが変形性膝関節症にも適応となったことから、ACLRとACIを併用した術式が今後散見されることが予想される。今回の経験からACLRとACIの組み合わせは膝伸展筋力と膝伸展可動域の改善に難渋しやすい可能性があり、術前からの膝伸展筋力と可動域の改善は必須と思われた。また、後療法ではACLRのQT腱採取による筋萎縮、再建靭帯の保護目的でleg extensionを避けること、ACIのため免荷が長期間であることや荷重位での関節面への圧力を避ける条件下での介入であった。このような条件下でも構造的特徴を考慮した介入により、術後のリスクを回避し膝伸展可動域や筋力の改善が得られた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告は、ヘルシンキ宣言の趣旨に基づき、対象者には口頭と書面にて説明し同意を得た。