講演情報

[KO1-02]外来血友病患者における定期的な関節評価を行う意義
~Hemophilia Joint Health Score(HJHS)を用いた評価~

*佐藤 文寛1、大城 宗生2、大場 寿恵1、榎本 卓真1、團野 祐輔1、宇野 亜由美1、野呂 絵美子1、城阪 朋子1、西郊 靖子1 (1. 京都第一赤十字病院 リハビリテーション科、2. 男山病院 血液内科)

キーワード:

血友病、HJHS、自覚症状

【はじめに】
血友病性関節症は反復する関節内出血を契機に進行し、日常生活動作機能の低下を招く慢性疾患である。薬物療法の進歩により入院を要する関節出血は減少し、リハビリテーションも進行した関節症への対応から、関節症の進行予防や身体活動向上に重点が置かれるようになってきている。しかし、血友病を専門とする医療機関は少なく、理学療法士(Physical Therapist: PT)が治療に携わる機会は限られている。特に、外来リハビリテーションにおける関節機能の定期追跡に関する報告はほとんどないのが現状である。
【目的】
本研究の目的は、PTが外来血友病患者に対して定期的にHJHS評価を実施し、経時的変化、および患者の自覚症状を分析することで、関節症進行予防におけるPTの役割を明らかにすることである。
【方法】
症例①は40歳代会社員の男性、血友病A重症、症例②は30歳代会社員の男性、血友病A中等症。ともに幼少期に血友病と診断され、止血治療として、エファネソクトコグ アルファ(遺伝子組み換え、販売名オルツビーオ)の週1回定期補充療法を行っていた。評価は、2024年4月から2026年3月までの期間に3回(初回・6か月後・18か月後)実施した。用いた指標はFIM(機能的自立度評価 Functional Independence Measure)の運動項目、関節機能評価は、外来での限られた時間で実施可能であり、活動性の高い若年患者にも使用できる指標としてHJHS(関節腫脹・筋萎縮・関節可動域・筋力低下・疼痛・轢音・歩行能力を評価、0~124点でscoreが高いほど状態不良)を用いた。HJHSの評価結果はその場で患者へフィードバックした。また、自覚症状を問診および医師の診療録から抽出した。なお、検査は同一のPTが実施した。
【結果】
症例①:FIM(運動項目)91点。HJHS総合scoreは28点⇒31点と悪化し、足関節轢音は右1点⇒2点、左0点⇒2点と悪化していた。しかし患者には自覚症状を認めなかった。
症例②:FIM(運動項目)90点。HJHS総合score25点⇒16点と改善しており、自覚症状も改善を認めた。一方で、左膝関節単独で見ると、筋力0点⇒1点、可動域0点⇒1点とスコアの悪化を認めたが、患者に悪化の自覚はなかった。
【結論】
今回、外来血友病患者2症例に対し、PTが定期的にHJHS評価を実施した結果、客観的評価と患者の自覚症状との乖離が明らかとなった。定期的な関節評価は、日常生活で負荷のかかる関節や経時的変化を詳細に把握し、関節症進行予防に向けた生活指導や運動指導を行う上で有用であった。また、評価結果を患者および主治医へフィードバックし、必要に応じて整形外科医への相談、装具や移動補助具の提案を行うことで、患者の理学療法への理解と安心感、意欲を高め、指導の受け入れにもつながると考える。PTが継続して関わることで、血友病患者の機能維持と生活支援に寄与できる可能性が示された。
【倫理的配慮、説明と同意】
京都第一赤十字病院倫理委員会の承認を得た(承認番号1891番)。