講演情報

[KO1-03]モバイル型ネーザルハイフローを用いた歩行練習が奏功し自宅退院が可能となった気腫合併肺線維症の一例

*小坂 亜紗実1、西村 喜裕1,2、楠 咲3、宮﨑 博子1 (1. 京都桂病院 リハビリテーションセンター、2. 京都橘大学大学院 健康科学研究科、3. 京都桂病院 呼吸器センター呼吸器内科)

キーワード:

気腫合併肺線維症、入院関連機能障害(HAD)、モバイル型ネーザルハイフロー

【症例紹介】
77歳男性。Y-8年の左肺癌術後より左肺の線維化を認め、Y年X-13日に気腫合併肺線維症(以下、CPFE)と診断された。X日に細菌性肺炎に伴う間質性肺炎の急性増悪にて入院、ステロイドパルス療法及び抗生剤にて治療された。入院前ADLは屋外独歩自立、家事も全て本人が行っていた。

【評価とリーズニング】
初期評価時、精神機能及び身体機能は良好。酸素化は安静時よりネーザルハイフロー(以下、NHF)を必要とし、ベッド上の僅かな体動や会話でSpO2:87%まで低下した。血液ガス所見は、PaO₂:81.7Torr、PaCO2:27.7Torr、P/F比:90.4であり、重度のI型呼吸不全を呈していた。呼吸不全の要因として、A-aDO2:535Torr、胸部単純CTでの右肺野の新規すりガラス影及び蜂巣肺、入院前の肺機能検査での%DLCO:58.5%、理学療法評価での痰貯留音から拡散障害と換気血流比不均等であると考えた。またADLは、FIM:57点(mFIM:22点、cFIM:35点) であり、NHFの使用によりベッド上であった。NHFは、一回換気量や呼吸数の影響をほとんど受けず安定した高濃度酸素投与が可能である一方、携帯性に乏しく長距離移動が困難という欠点があり、入院関連機能障害(以下、HAD)のリスクが高いとされている。さらに、ステロイドパルス療法の副作用によりミオパチーを生じる可能性や入院期間の長期化が予測されたことから、廃用症候群の予防が重要と考えた。そのため、HAD及び廃用症候群の予防を目的にレジスタンストレーニングや全身持久力トレーニングを中心とした理学療法を実施した。

【介入内容と結果】
X+1日より理学療法を開始し、X+13日までコンディショニング及びNHFによる酸素投与下で立位足踏み練習を実施した。X+14日より歩行練習を試みたが、NHFの使用では歩行距離に制限を受けるため、安定した酸素投与を維持しつつバッテリーを搭載し持ち運びが可能なモバイル型ネーザルハイフロー(以下、mNHF)を使用して歩行練習を行なった。歩行距離は、低酸素血症や呼吸困難を指標に適宜調整した。X+26日に連続50m歩行が可能となり、X+27日よりオキシマイザーを用いた歩行練習に移行した。その結果、廃用症候群を生じることなく、ADLはFIM:112点(mFIM:77点、cFIM:35点)と改善を認め、X+60日に在宅酸素療法を導入して自宅退院となった。

【考察】
CPFE急性増悪患者に対する運動療法として、レジスタンストレーニングや歩行練習などの全身持久力トレーニングが報告されている。本症例ではNHFの使用により活動範囲の制限が生じていたが、安定した酸素投与を維持し持ち運びが可能なmNHFを使用したことで安全な歩行練習を実施することができた。その結果、入院加療によるHADや廃用症候群を最小限に留めることができ、自宅退院が可能になったと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に際し、ヘルシンキ宣言に則り、対象者に対して説明と同意を行い、承諾を得た。