講演情報

[KO2-03]大腿骨遠位端骨折術後に膝関節屈曲制限を呈した症例
―腫脹および大腿骨前脂肪体に着目して―

*小谷 祐貴1、木本 実花1 (1. 蘇生会総合病院)

キーワード:

大腿骨遠位端骨折、腫脹、大腿骨前脂肪体(PFP)

【症例紹介】
症例は60歳代女性である。交通外傷により右大腿骨遠位端骨折、左橈骨遠位端骨折、腰椎破裂骨折を受傷した。X日に右大腿骨遠位端骨折に対して観血的骨接合術が施行され、翌日より理学療法が開始、X +17日に回復期病棟へ転棟となった。主訴は膝関節運動時痛であり、希望は自宅復帰に向けて実用的な歩行を獲得することであった。

【評価とリーズニング】
初期評価では膝関節屈曲可動域は55°であり膝蓋大腿関節および膝蓋腱深部に疼痛を認めた。周径測定では膝蓋骨上縁において患側38.5cm、健側33.0cmであり膝関節周囲の腫脹を認め炎症所見は残存していた。触診では膝蓋骨は低位を示し内側滑走制限を認めた。また、超音波画像評価では大腿四頭筋腱周囲の水腫、大腿骨前脂肪体(PFP)の肥厚を認めた。これらの所見から、術後侵襲に伴う腫脹は大腿四頭筋の防御性収縮や関節内圧を上昇させ、膝蓋大腿関節への圧負荷増大に関与している可能性があると考えた。また、PFP肥厚による膝蓋上嚢および大腿四頭筋の滑走障害が膝関節屈曲制限と運動時の疼痛に関与していると考えた。

【介入内容と結果】
介入初期は、腫脹管理を目的として弾性包帯による圧迫、膝蓋骨および術創部周囲モビライゼーション、運動療法を実施した。その結果、周径測定では膝蓋骨上縁において患側38.5cmから37.0cmへ減少し膝関節屈曲可動域は90°まで改善した。しかし、膝関節屈曲最終域にて膝蓋大腿関節痛が残存していた。超音波画像による再評価では、PFP肥厚の残存を認めたためPFPの滑走性改善目的として、超音波療法およびリフトオフ操作を追加した。最終評価では膝関節屈曲可動域は110°まで改善し、膝蓋大腿関節痛の軽減および超音波画像上ではPFP厚の減少を認めた。

【考察】
膝関節腫脹は関節内圧を上昇させることで膝蓋大腿関節の接触圧増大や滑走障害を生じさせ、膝関節可動域制限および疼痛の要因となることが報告されている。本症例においても、腫脹軽減に伴い膝関節屈曲可動域が改善したことから関節内圧低下や膝蓋骨滑走性改善が可動域改善に関与した可能性が考えられた。またPFPは膝屈伸時に膝蓋上嚢や大腿四頭筋の滑走を補助する組織であり、肥厚すると周囲組織の滑走性が低下し膝蓋大腿関節へのストレス増大を招くとされる。本症例ではPFPの滑走性改善を目的とした介入後に疼痛軽減および可動域改善を認めたことから、PFP厚の減少および滑走性改善が膝蓋大腿関節へのストレスの軽減に関与した可能性が示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に則り作成した。症例には発表の趣旨を十分説明し、個人情報保護に配慮したうえで書面による同意を得た。