講演情報

[KO2-04]大腿部肉腫に対する分層植皮術後の理学療法の経験
~植皮部の滑走に着目して~

*白石 健蔵1、後藤 大智1、齋藤 志歩1、岡田 倫空1、野村 亮太郎1、田村 滋規2 (1. 田村クリニックリハビリテーション科、2. 田村クリニック整形外科)

キーワード:

分層植皮術、大腿高悪性度肉腫、下肢機能再建

【症例紹介】
 四肢悪性骨軟部腫瘍切除後の再建は多様であり,リハビリテーション治療も定型的ではない.症例は60歳代女性,右大腿高悪性度肉腫に対し大腿筋膜張筋を全切除し,広背筋皮弁と分層植皮術を施行した.主訴は降段動作の膝崩れであった.
【評価とリーズニング】
 徒手筋力検査は股関節外転3,屈曲位外転3,膝関節伸展3であった.整形外科的テストはober testとThomas testが陽性であった.疼痛は動作開始時に植皮側の術創部に認めた.降段動作では植皮部の緊張が増大し,支持性が無く崩れ落ちるような膝崩れを認めた.筋力低下を問題点として挙げ筋力訓練を実施したが,介入直後の降段動作で植皮側の術創部にNumerical Rating Scale (以下NRS)9を認めた.植皮部の滑走性の再評価を実施し,頭尾方向は低下著明,内外側方向は低下,回旋方向は概ね消失していた.植皮部のモビライゼーションを実施後,膝崩れと植皮部の緊張感は軽減した.また,分層植皮術は移植片の拘縮を認めやすい事から,問題点を植皮部の滑走性低下へ変更した.
【介入内容と結果】
 術創部のNRS9を認めたが緊満感が強い為, 患者と皮膚の状態を共有した.管理すべき注意点として①炎症症状(疼痛・熱感・腫脹が翌日残存すれば訓練中断,翌日消失すれば注意して訓練継続),②毛細血管再充満時間(3秒以上は循環低下と判断し訓練中断,2秒以内は訓練継続)とした.これらの管理で植皮部の愛護的モビライゼーションを週3回,4週間実施した.最終評価では徒手筋力検査は各4へ向上し,整形外科的テストは共に陽性であったがober testの可動域は改善した.動作開始時の疼痛は軽減し,植皮部の滑走性は全方向で軽度の改善を認めた.降段時の膝崩れは一部残存したが,植皮部の緊張は消失した.また,NRS9を招いた筋力訓練を再度実施し,降段動作でNRS0の結果となった.
【考察】
 四肢悪性骨軟部腫瘍切除後のリハビリテーション介入は症例に応じて柔軟に対応しなければならない.筋力訓練後の疼痛増悪は,植皮部の滑走性低下に加え,剪断ストレスが増強した事が原因である.最終的に降段時のNRSが0になった要因は,患者と皮膚の状況を共有した事による過負荷の抑制とモビライゼーションを実施し滑走性が改善した事で植皮部の牽引ストレスが軽減した.植皮症例においては,筋力訓練よりも植皮部の滑走性と負荷管理が機能改善に不可欠である.
【倫理的配慮、説明と同意】
 本症例に発表の目的と意義について説明を行い,同意を得た