講演情報

[KO2-05]右人工骨頭挿入術後Duchenne徴候を認めた症例に対し電気刺激療法を実施した一例

*高田 知輝1、木本 実花1、水津 里美1、奥間 和志1、大野 竜雅1 (1. 蘇生会総合病院)

キーワード:

Duchenne徴候、電気刺激療法、人工骨頭挿入術

【症例紹介】本症例は50歳代男性、バイク事故により右大腿骨頚部骨折を受傷した。X日に右人工骨頭挿入術が施行され、翌日より理学療法を開始、X+23日に当院回復期病棟へ転床、X+32日に自宅退院され、X+34日より仕事復帰を目指し外来リハビリテーションを開始した。

【評価とリーズニング】初期評価では、右股関節外転筋力がMMT2であり、右MstからTstにおいてDuchenne徴候、荷重時痛(NRS5)を認めた。これらの所見より股関節外転筋力低下および荷重時痛により骨盤安定性が低下しDuchenne徴候を呈したと考えた。中間評価では荷重時痛はNRS3に軽減したが、右股関節外転筋力はMMT2と筋力低下は残存した。退院時には、右股関節外転筋力はMMT3となったが歩行時の跛行は残存した。最終評価では、右股関節外転筋力はMMT4に向上し、荷重時痛およびDuchenne徴候は消失した。以上より、股関節外転筋力の向上および荷重時痛の軽減が骨盤安定性の改善に寄与したと考える。

【介入内容と結果】開始当初は、股関節周囲のストレッチやROM訓練から開始し、立位での重心移動練習やサイドステップ、段差昇降練習および歩行訓練の課題指向型練習を実施した。中間評価では、右股関節外転筋力がMMT2と改善を認めずDuchenne徴候も残存していた。そこで歩行時の股関節外転筋活動の補助および立脚期の骨盤安定性向上を目的に歩行神経筋電気刺激装置(NM-F1)を11日間使用した。電気刺激は、術側の中殿筋に対して実施し、刺激強度は疼痛なく筋収縮が得られる最大強度に設定した。その結果、退院時には右股関節外転筋力はMMT3に向上および歩行時のDuchenne徴候が軽減し独歩自立となった。外来リハビリテーションでは週3回の頻度で、随意収縮を促通しながら筋力強化を図る目的で、随意運動介助電気刺激装置(IVES)のパワーアシストモードを用い課題指向型練習を継続した。その結果、股関節外転筋力はMMT4に改善し、Duchenne徴候と荷重時痛が消失し歩容の改善を認め仕事復帰に至った。

【考察】人工骨頭置換術後の電気刺激に関する先行研究では、大腿骨頸部骨折患者に対し股関節外転筋への電気刺激と課題指向考型練習の併用は、股関節外転筋力や歩行能力を向上させる可能性が報告されている。中間評価では股関節外転筋力において重力に抗した十分な随意収縮が困難であったため、NM-F1を用いて歩行中の筋活動を補助した。随意収縮の改善後はIVESへ変更し、随意収縮を促通しながら課題指向型練習を継続した。回復段階に応じてNM-F1およびIVESを使い分けたことが股関節外転筋力および骨盤安定性の改善につながり歩容改善に寄与した可能性が示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】本症例には本研究の趣旨と内容、得られたデータは研究以外の目的に使用しないこと、個人情報の取り扱いに十分注意することを口頭にて説明し、同意を得た。