講演情報

[KO4-02]脳卒中片麻痺患者に対するロボット足関節アシストが歩行即時効果に及ぼす影響:背屈と底背屈の比較検証

*新明 俊英1,2、寺前 達也2、野田 智之2 (1. 学研都市病院 リハビリテーション科、2. 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 脳情報通信総合研究所 ブレインロボットインタフェース研究室)

キーワード:

脳卒中片麻痺、底背屈アシスト、床反力前後成分

【はじめに】脳卒中片麻痺患者の歩行再建において、足関節の運動制御障害は遊脚期のクリアランス低下や立脚期の不安定性を招く主要因である。近年、ロボットアシスト歩行訓練が注目されているが、従来のモーター駆動型ロボットでは、底屈アシスト時に逆駆動性の低下が生じ、生体運動を阻害する懸念があった。Nodaら(2018)が開発した足関節ロボットは空気圧人工筋を採用しており、高い逆駆動性を維持したまま底屈アシストを提供できる。しかし、本ロボットにおける背屈単独アシストと底背屈複合アシストの違いが歩行に及ぼす即時効果は明らかではない。そこで本研究では、脳卒中片麻痺患者に対し両アシストを各1セッション実施し、床反力前後成分からその即時効果を比較検証した。【方法】対象は脳卒中片麻痺患者1名とした。条件は、A期:トレッドミル歩行のみ、B期:ロボットによる背屈アシスト歩行、C期:ロボットによる底背屈アシスト歩行の3条件(各1セッション)とした。各介入直後にアシストを除去した状態で10m快適歩行テストを行い、歩行速度を測定した。また、トレッドミル歩行中の麻痺側立脚相における床反力前後成分を5ストライド測定し、立脚周期(以下、% stance phase:%SP)で正規化した平均波形および標準偏差を算出した。【結果】10m快適歩行テストの歩行速度は、A期:0.60 m/sec、B期直後:0.50 m/sec、C期直後:0.64 m/secであり、C期で最も高値を示した。床反力前後成分では、B期直後に立脚初期(10~20%SP付近)の急峻な制動ピークを認め、離地直前(約90%SP)の前方駆動力は平坦化した。一方、C期直後では立脚初期の制動の立ち上がりが最も緩やかとなり、離地直前(約90%SP)に前方駆動力のピークが最も大きかった。また、同局面において標準偏差の増大を認めた。【考察】B期の背屈単独アシストでは、アシスト除去後も踵接地から足関節を支点とした前方へのローリング動作が促され、安定した歩行制御への即時的変化が示唆された。一方、C期の底背屈複合アシストでは、高い逆駆動性を有する空気圧人工筋により生体運動を妨げにくい状態で底屈アシストが提供された結果、底屈アシストに対する即時的な運動適応が生じ、歩行制御が変化した可能性が考えられる。離地直前の前方駆動力の増大は、この適応による推進作用の向上を反映している可能性があり、歩行速度の改善に寄与したと考えられる。また、運動学習過程では、新たな運動課題への適応初期に探索的な運動変動が増大することが知られている。本症例で離地直前に認められた標準偏差の増大も、この探索的な運動変動を反映した可能性が示唆された。以上より、底背屈複合アシストは離地直前の前方駆動力を即時的に増大させ、歩行速度の向上に寄与する可能性が示された。今後は、運動パターンの定着・安定化に向け、反復介入による長期的な運動学習効果を検証する必要がある。 【倫理的配慮、説明と同意】本研究は学研都市病院の倫理委員会の承認(23030616-001)を得た後、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者に文書を用いて十分に説明した後に、書面にて同意を得て実施した。