講演情報

[KO4-05]重症くも膜下出血症例における歩行再建の過程

*米原 卓哉1、髙橋 慎太郎2 (1. 京都岡本記念病院、2. くみやま岡本病院)

キーワード:

くも膜下出血、早期離床、歩行再建

【症例紹介】
動脈瘤性くも膜下出血は脳血管攣縮や遅発性脳虚血などの合併症により機能予後不良となる例が多く、重症例では急性期の積極的な運動療法に躊躇する場面も少なくない。一方、近年は早期離床および歩行練習の安全性・有用性が報告されている。今回、歩行再建を見据えて急性期から積極的な運動療法を実施した重症動脈瘤性くも膜下出血症例を経験したため報告する。症例は50代男性で、右中大脳動脈瘤破裂による動脈瘤性くも膜下出血を発症し、World Federation of Neurosurgical Societies分類はGradeⅤであった。
【評価とリーズニング】
急性期は人工呼吸器管理、頭蓋内圧センサー管理およびスパイナルドレナージ管理を要した。頭部CTでは右中大脳動脈領域外側優位の脳内血腫を認めたが、経過中に重度の脳血管攣縮およびそれに伴う虚血性病変は認めなかった。身体所見ではStroke Impairment Assessment Set-motor(SIAS-m)は(0-0)(0-0-0)、Scale for Contraversive Pushing(SCP)は座位・立位ともに1-1-1であり、注意障害および左半側空間無視を認めた。以上より、重度運動障害に加え、姿勢制御障害および高次脳機能障害が歩行を阻害していると考えた。一方、50代と比較的若年で発症前ADLは自立しており、重篤な二次脳損傷を認めなかったことから、機能予後は比較的良好である可能性があり、廃用予防および歩行再建を目的として積極的な運動療法を実施する方針とした。
【介入内容と結果】
急性期より全身状態を考慮しながら離床を進め、発症10病日より長下肢装具を用いた立位・歩行練習を開始した。発症15病日時点では重度の姿勢制御障害を認め、歩行は3人介助を要した。麻痺側支持性の確保および姿勢制御能力の改善を目的に歩行練習を継続し、発症52病日には1人介助下での歩行が可能となり、発症73病日には長下肢装具の膝継手ロック解除が可能となった。最終評価ではSIAS-mは(3-1C)(4-4-3)、SCPは0-0-0となった。注意障害および左半側空間無視は残存したものの、T字杖および短下肢装具を使用し見守りレベルでの歩行が可能となった。10m歩行時間は23.66秒、Timed Up and Go Testは19.32秒であった。Functional Independence Measureは18点から87点へ改善し、自宅退院に至った。
【考察】
本症例では、機能回復の可能性を考慮し、廃用予防および歩行再建を目的として急性期から積極的な運動療法を実施した。その結果、発症早期には3人介助を要した重症例であったが、見守りレベルでの歩行獲得および自宅退院に至った。重症動脈瘤性くも膜下出血では全身管理や合併症への懸念から積極的な運動療法が遅れる場合がある。本症例の経過から、重症例であっても病態や残存機能を踏まえて機能回復の可能性を判断し、急性期から積極的な運動療法を実施することが、廃用予防および歩行能力の改善につながる可能性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、対象者と家族に口頭および書面にて十分な説明を行い、同意を得た。