講演情報

[KO5-02]「上肢挙上動作が改善し、活動・参加機会を獲得できたパーキンソン病の一症例」

*本荘 和也1、金子 智哉1、中埜 正悟1、入谷 幸一1、北平 真由子1、橋川 佳奈1 (1. 長岡京病院)

キーワード:

パーキンソン病、四つ這い、上肢挙上動作

【症例紹介】
 80歳代、男性。X年、パーキンソン病(以下、PD)(Hoehn-Yahr分類Ⅲ)と診断。X年+2年、自宅での転倒が増加し、訪問リハビリ開始。既往歴は腰部脊柱管狭窄症にて後方固定術を施行。診断後も、洗濯物を取り込む家事を行っていたが、転倒増加により行えていない。PDの患者は、病状の進行に伴い、今まで遂行していた活動が行えなくなり、家庭内役割の変更を余儀なくされることが多くなる。今回、PDの症例に対して訪問リハビリを実施し、上肢挙上動作改善から活動・参加に繋がったため、考察を加えて報告する。
【評価とリーズニング】
 主訴は、高い所に手が届かない、腰がふらつく。希望は、以前した家事動作を再開したい。機能的自立度評価法では117/126点。基本動作は、立位保持は見守りレベルで、頸部・胸部屈曲位、骨盤後傾位を特徴とするスウェイバック位を呈し、前後への動揺を認める。立位での上肢挙上動作は、右肩関節屈曲、肩甲骨上方回旋・内転、胸椎伸展が乏しく、右股関節伸展による代償動作で右後方への転倒リスクが増加している。PD兆候として、頸部・体幹・肩関節に軽度~中等度の固縮を認め、右後方への姿勢反射障害を認めた。関節可動域検査(以下、ROM-T)は、右肩関節屈曲90°、体幹伸展-20°。安静時筋緊張検査は、両大胸筋・腹直筋の筋緊張亢進を認め、脊柱起立筋の筋緊張低下を認めた。
【介入内容と結果】
 週1回40分の訪問リハビリを実施。治療は、肩関節・体幹の関節可動域練習、四つ這い練習、立位での上肢挙上動作練習を行い、両大胸筋・腹直筋の抑制を図り、脊柱起立筋の筋活動の賦活と肩関節屈曲・体幹伸展可動域拡大を図った。2ヶ月後、ROM-Tは右肩関節屈曲90°から120°、体幹伸展-20°から-10°まで拡大し、両大胸筋・腹直筋・脊柱起立筋の筋緊張は正常域に近づいた。それにより右上肢挙上動作時の右後方への転倒リスクが軽減し、以前行っていた洗濯物を取り込む家事を再開することができ、活動・参加機会を獲得することができた。
【考察】
 本症例は、右上肢挙上動作困難から今まで行っていた活動が行えなくなっていた。原因として、PDの病状の進行に伴う姿勢異常により、肩関節屈曲、肩甲骨上方回旋・内転、胸椎伸展制限が生じ、上肢挙上動作が困難になっていると考えた。治療では、四つ這い位にて大胸筋・腹筋群と背筋群の筋緊張を整えた状態で、肩甲上腕リズム、胸椎伸展を促した。これにより立位での上肢挙上動作時の右肩関節屈曲、肩甲骨上方回旋・内転、胸椎伸展が改善したため、右後方への転倒リスクが軽減し、活動・参加機会を獲得することができたと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
 本報告に際して、ヘルシンキ宣言に基づき個人情報とプライバシーの保護に配慮し、対象者及びご家族へ説明の上、文書にて同意を得た。