講演情報

[KO5-04]課題特異的トレーニングにより起立動作が改善した慢性硬膜下血腫患者症例

*坂尾 悠那1、和田 勇介1、井村 拓人1 (1. 医療法人社団蘇生会)

キーワード:

起立動作、課題特異的トレーニング、姿勢制御

【症例紹介】
80代女性。左慢性硬膜下血腫に対し手術施行。術後X+1日よりリハビリ開始、X+15日より回復期病棟にてリハビリを実施した。ウォーカー歩行は自立レベルであったが、病棟ベッド高である40cmからの起立が困難であり、ベッドサイドでの転倒歴もあったことから棟内ウォーカー見守りとなっており、ADL向上の妨げとなっていた。
【評価とリーズニング】
初期評価では、40cm座面からの起立困難(骨盤の前傾不十分、下腿前傾不十分)を認めた。等尺性膝伸展筋力体重比は14.2/20%(R/L)であり、大森の報告における起立可能域に達していなかった。FACT12点(動的端座位保持・体幹回旋等で減点)、BBS28点(起立・着座・前方リーチ等で減点)であった。以上より動的座位保持能力および動的立位保持能力の低下が起立困難の主因と判断し、課題特異的トレーニングを中心とした介入を立案した。
【介入内容と結果】
FACTおよびBBSの起立関連項目を参考に、課題特異的トレーニング(起立練習・起立動作指導)、前方リーチ訓練(ストレッチポールを用いた骨盤前傾促通、骨盤誘導補助)、動的バランストレーニングを実施した。最終評価では、FACT19点、BBS46点へ改善し、40cm座面からの起立が可能となった。等尺性膝伸展筋力体重比は16.6/19%(R/L)であった。
【考察】
課題特異的介入により体幹・骨盤の運動制御能力が向上し、動的座位保持能力が改善した。動的座位保持は主に体幹・骨盤戦略を用いた重心制御によって遂行されるため、これらの機能向上が動的座位保持能力の改善に寄与したと考えられる。また、実際の起立動作に即した課題特異的介入を行ったことで、動作に特化した運動学習が促進されたと考えられる。動的立位保持は離殿相において足関節・股関節戦略を用いた重心制御によって遂行される。本症例では動的座位保持能力の改善により体幹・骨盤機能および重心移動能力が向上し、立位における姿勢制御戦略の遂行が可能となったことで、動的立位保持能力の改善につながったと考えられる。以上より、座位・立位の姿勢制御能力向上により支持基底面内での安定した体幹前傾と前方への重心移動が可能となり、起立動作の獲得につながったと考えられる。なお最終評価での膝伸展筋力は大森の起立可能域(35%以上)には到達しなかったが、課題特異的介入による姿勢制御能力・協調性の向上が筋力不足を補い、起立動作獲得に寄与したと示唆される。
【倫理的配慮、説明と同意】
本症例には研究の目的・方法を説明し同意を得た。個人情報の保護には十分配慮した。