講演情報
[KS1-01]重度Pusher現象を呈した被殻出血症例に対し早期介入により予後予測を上回る歩行自立を認めた一例
*陸平 拓海1、和田 勇樹1、村田 拓巳1、原 弘明1、中久木 卓也2、宮﨑 博子1 (1. 京都桂病院 リハビリテーションセンター、2. 京都桂病院 脳卒中センター脳神経外科)
キーワード:
Pusher現象、予後予測、早期運動療法開始
【症例紹介】
80代女性、左上下肢不全麻痺・意識障害・右共同偏視を呈してX日に当院へ救急搬送。頭部CTにて右被殻出血(約10ml/Ⅲa型)を認めた。発症前ADLは屋内独歩自立、屋外押し車歩行自立であった。X+1日からリハを開始した。
【評価とリーズニング】
初期評価(X+1~4)ではFugl Meyer Assessment-上肢(以下FMA-UE):14/66点、Fugl Meyer Assessment-下肢(以下FMA-LE):16/34点であり、重度の運動機能障害を認めた。加えてBurke lateropulsion scale(以下、BLS):14点と重度Pusher現象を呈していた。脳卒中後の歩行自立予測モデルTWISTスコア(4点満点)は膝関節伸展MMT:1点のみであり、これらの予後予測では、4週後の歩行自立率は3%と低値であり、歩行自立は困難であることが予測された。一方、被殻出血のCT分類/血腫量と歩行予後に関する報告から、本症例における出血量10ml/Ⅲa型の歩行予後は比較的良好と推察された。本症例の予後予測においては、従来の予後予測モデルでは、可逆的要素を含むPusher現象が十分に反映されていない可能性があった。
【介入内容と結果】
本症例では、歩行再獲得における主要な可逆的阻害因子はPusher現象であると考え、発症早期より視覚的フィードバックや外的基準を用いた主観的身体垂直の再学習に努め、体性感覚入力を促進する能動的荷重訓練を実施した。運動療法開始時にはBLS:14点であったが、開始後の数日間は1日につきBLSで約3-5点の改善を認め、X+10日ではBLS:2点、X+20~22日ではBLS:0点まで改善し、Pusher現象が消失した。Pusher現象消失に伴い、歩行訓練量を開始時の約25mから150mまで増加できた。最終評価(X+31~32日)では、FMA-UE:47/66点、FMA-LE:26/34点と改善し、歩行は右手すり把持にて自立レベルとなった。
【考察】
本症例はTWISTスコアの結果から歩行自立は困難と予想されたが、早期の運動療法開始により予後予測を上回る機能回復を認めた。この要因として、①Pusher現象という可逆的な姿勢制御障害に対する早期介入、②出血量10ml/Ⅲa型という出血予後の良好性の2点が関与した可能性がある。特にPusher現象改善は早期から歩行訓練量を増加したことに伴い、下肢運動機能の回復が促進された可能性があり、機能回復の修飾因子として重要であると考えられた。Pusher現象は脳卒中後歩行回復における重要な可逆的阻害因子であり、早期運動療法開始により良好な効果が期待できる。本症例の結果から予後予測モデルの臨床適用には、十分な注意が必要であると示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際し、患者および家族に十分な説明を行い同意を得た。個人情報は匿名化して報告している。
80代女性、左上下肢不全麻痺・意識障害・右共同偏視を呈してX日に当院へ救急搬送。頭部CTにて右被殻出血(約10ml/Ⅲa型)を認めた。発症前ADLは屋内独歩自立、屋外押し車歩行自立であった。X+1日からリハを開始した。
【評価とリーズニング】
初期評価(X+1~4)ではFugl Meyer Assessment-上肢(以下FMA-UE):14/66点、Fugl Meyer Assessment-下肢(以下FMA-LE):16/34点であり、重度の運動機能障害を認めた。加えてBurke lateropulsion scale(以下、BLS):14点と重度Pusher現象を呈していた。脳卒中後の歩行自立予測モデルTWISTスコア(4点満点)は膝関節伸展MMT:1点のみであり、これらの予後予測では、4週後の歩行自立率は3%と低値であり、歩行自立は困難であることが予測された。一方、被殻出血のCT分類/血腫量と歩行予後に関する報告から、本症例における出血量10ml/Ⅲa型の歩行予後は比較的良好と推察された。本症例の予後予測においては、従来の予後予測モデルでは、可逆的要素を含むPusher現象が十分に反映されていない可能性があった。
【介入内容と結果】
本症例では、歩行再獲得における主要な可逆的阻害因子はPusher現象であると考え、発症早期より視覚的フィードバックや外的基準を用いた主観的身体垂直の再学習に努め、体性感覚入力を促進する能動的荷重訓練を実施した。運動療法開始時にはBLS:14点であったが、開始後の数日間は1日につきBLSで約3-5点の改善を認め、X+10日ではBLS:2点、X+20~22日ではBLS:0点まで改善し、Pusher現象が消失した。Pusher現象消失に伴い、歩行訓練量を開始時の約25mから150mまで増加できた。最終評価(X+31~32日)では、FMA-UE:47/66点、FMA-LE:26/34点と改善し、歩行は右手すり把持にて自立レベルとなった。
【考察】
本症例はTWISTスコアの結果から歩行自立は困難と予想されたが、早期の運動療法開始により予後予測を上回る機能回復を認めた。この要因として、①Pusher現象という可逆的な姿勢制御障害に対する早期介入、②出血量10ml/Ⅲa型という出血予後の良好性の2点が関与した可能性がある。特にPusher現象改善は早期から歩行訓練量を増加したことに伴い、下肢運動機能の回復が促進された可能性があり、機能回復の修飾因子として重要であると考えられた。Pusher現象は脳卒中後歩行回復における重要な可逆的阻害因子であり、早期運動療法開始により良好な効果が期待できる。本症例の結果から予後予測モデルの臨床適用には、十分な注意が必要であると示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
発表に際し、患者および家族に十分な説明を行い同意を得た。個人情報は匿名化して報告している。
