講演情報

[JMSY-02]物理療法と徒手理学療法の共創

山口 智史 (京都大学大学院医学研究科先端理学療法学講座)
<略歴>
2004年 山形県立保健医療大学 保健医療学部 理学療法学科 卒業
2004年 慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター
2007年 東京湾岸リハビリテーション病院
2010年 日本学術振興会 特別研究員DC1
2013年 慶應義塾大学大学院 医学研究科 博士課程修了
2013年 慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学教室 特任助教
2016年 日本学術振興会 海外特別研究員(コペンハーゲン大学)
2017年 山形県立保健医療大学 保健医療学部 准教授
2020年 順天堂大学 保健医療学部 先任准教授
2024年 京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 教授
<関連資格>
専門理学療法士(物理療法・基礎理学療法・神経理学療法)
<学術研究業績>
物理療法,ニューロモデュレーション,神経理学療法に関する査読付き学術誌論文を100編以上発表。第30回国際臨床神経生理学会 Cobb Award,第50回日本理学療法学術大会 最優秀賞,日本臨床神経生理学会 奨励賞など多数受賞。物理療法,神経理学療法,痙縮,ニューロリハビリテーションに関する専門書・教科書の執筆にも携わる
<関連領域社会活動(学会理事など)>
日本物理療法学会 理事長
日本物理療法研究会 副理事長
日本基礎理学療法学会 理事
日本運動療法学会 理事
日本神経理学療法学会 評議員
日本臨床神経生理学会 代議員
疼痛を有する患者では,組織の損傷や機械的ストレスだけでなく,感覚入力の増幅,自律神経反応の変調,運動制御の変化が重なり合い,症状や動作の変化として現れる。理学療法で用いられる治療技術は,運動課題,徒手的機械刺激,温熱・寒冷刺激,電気刺激,磁気刺激,言語的教示など,いずれも生体への入力として捉えることができる。重要なのは,個々の技術を単独の効果として扱うことではなく,患者の反応性をみながら,どの入力を,どの程度の強度・時間・順序で用いるかを考え,提供することである。
 物理療法は,物理的エネルギーを治療刺激として用い,疼痛調節,神経筋活動,循環,自律神経活動,中枢神経活動などに働きかける技術体系である。その強みは,刺激条件を比較的明確に設定でき,生体反応を観察しながら介入を調整できる点にある。たとえば,疼痛や過敏性が強く,接触や運動に対して防御的な反応が生じる場面では,温熱,寒冷,電気刺激などにより感覚入力や自律神経反応を調整し,評価や治療を進めやすい身体状態を整えることができる。また,疼痛や過敏性が軽減した直後は,感覚入力と運動出力の関係が変化しやすい時期でもある。その変化を運動療法や日常動作へ接続するために,神経筋電気刺激,振動刺激,磁気刺激などを用いて筋活動や感覚入力を補助することは,物理療法の重要な役割である。
 本講演では,疼痛・自律神経系を含む神経制御の視点から,物理療法が徒手理学療法,運動療法,患者教育とどのように接続し得るかを整理する。患者の病態と反応に応じて物理的刺激を選択し,疼痛の軽減,運動制御の改善,活動の再獲得へつなげることは,物理療法学の重要な実践課題である。物理療法を,患者の状態を変化させ,次の治療を支える治療入力として位置づけ,患者の改善に向けた物理療法と徒手理学療法の共創のあり方を考えたい。