講演情報

[JMSY-03]徒手理学療法における自律神経マネジメントとの共創

中村 雄一 (株式会社TRIGGER)
<略歴>
2005年 愛媛十全医療学院 理学療法学科 卒業
2005年 医療法人社団飛翔会 高陽整形外科クリニック 
2018年 株式会社TRIGGER                

<関連資格>
2018年 Fascial Manipulation®︎認定Specialist
         
<学術研究業績>
・中村雄一, 半田瞳, 慢性の便秘症状に対するFascial Manipulationの効果, 自律神経, 2024
・中村雄一, 半田瞳, 機能性ディスペプシアを有する女性に対するFascial Manipulationの効果, 徒手理学療法, 2025
近年、慢性疼痛をはじめとする筋骨格系疾患では、局所組織の異常だけでは説明できない症例が数多く報告されている。睡眠障害、心理社会的要因、ストレス反応、身体活動量の低下、さらには自律神経機能の変化など、多様な因子が相互に影響しながら症状の発生や遷延に関与することが明らかとなりつつある。このような背景から、自律神経系は徒手理学療法によって変化し得る対象であると同時に、徒手理学療法の反応性や治療効果を左右する身体背景として捉える視点が重要になってきている。
 臨床においては、クライアントの主観的変化だけでなく、自律神経反応を把握する一助として、胸椎可動性、心拍変動、呼吸パターン、瞳孔反応、咽喉機能などをスクリーニングに用いている。自律神経活動は循環、呼吸、瞳孔、消化管などの末梢反応として表出することが知られており、これらを筋骨格系の評価と併せて確認することで、介入前後の身体反応や刺激に対する適応状態を多面的に捉えることを試みている。
 一方、皮膚、筋膜、筋・関節、内臓などに存在する感覚受容器からの求心性入力は中枢神経系で統合され、自律神経出力の調節に関与している。そのため、徒手理学療法はこれらの感覚入力を介して身体適応や自律神経活動に影響を及ぼし得る介入として捉えることができる。特に筋膜・Fasciaは、豊富な自由神経終末を有することから、感覚情報を伝達する重要な組織の一つであり、自律神経機能との関連を考えるうえで重要な役割を担う可能性がある。
 本シンポジウムでは、このような神経生理学的知見を基盤に、徒手理学療法が筋骨格系機能障害のみならず、内部機能および自律神経機能との関連が示唆される病態へどのように応用されているのか、その理論的背景と臨床的可能性について紹介する。さらに、自律神経マネジメントが徒手理学療法の評価および介入にもたらす臨床的意義を整理するとともに、物理療法やウィメンズヘルス領域との接点を踏まえ、「共創」という視点から徒手理学療法の新たな可能性を提示する。