講演情報

[JEL1-01]理学療法におけるテクノロジーの活用とスケールアップ

金居 督之 (金沢大学融合研究域融合科学系)
<略歴>
2018年 神戸大学大学院保健学研究科博士課程後期課程 修了
2019年 株式会社PREVENT 入職
2020年 甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 講師
2023年 金沢大学融合研究域融合科学系 准教授
<関連資格>
脳卒中認定理学療法士
<学術研究業績>
Kanai M, et al. Heterogeneous associations of a mobile health-based disease management program on uncontrolled hypertension: A target trial emulation study. PLOS Digital Health. 2026;5(3):e0001268.
<関連領域社会活動>
日本予防理学療法学会理事、日本運動疫学会学術委員・編集委員
Asia-Pacific Society for Physical Activity, Scaling Up Physical Activity Special Interest Group
医療・健康分野では、ウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリの活用が進み、心拍数や睡眠、身体活動などのライフログデータに加え、痛みや体調などの健康情報を日常生活の中で継続的に把握できるようになっている。理学療法においても、対面で得られる情報に加え、生活場面で蓄積されるデータを評価や介入に活用する取り組みが広がっている。これらのデータを時系列で捉えることで、対象者の症状やライフスタイルの変化を把握し、その推移に基づいて評価や支援内容を検討するデータ駆動型の実践が可能となる。また、個人の経時データを蓄積および統合することは、評価の精緻化や支援内容の改善にもつながる。
 テクノロジーの活用によって、運動療法、患者教育、セルフマネジメント支援、遠隔指導など、支援の幅が広がっている。運動器疾患を含む多様な領域で、アプリやデバイスを介した支援は時間や場所の制約を軽減し、対面以外でも支援を継続できる可能性がある。一方、対象者の利用環境、デジタル技術への習熟度、安全性やプライバシーなど、導入に際しての課題もある。利点を十分に活かすには、理学療法士がその特性と限界を理解し、目的や対象者に応じて適切に用いることが求められる。
 さらに、有効性が示された実践をより多くの対象者に提供し、継続可能な形で運用するには、スケールアップの視点が必要である。スケールアップには、利用者数の拡大だけでなく、現場の文脈に応じた適応、運用体制の整備、組織や地域との連携などが含まれる。アプリやデバイスの機能に加え、専門職による支援やステークホルダーとの協働を組み合わせ、実践を日常的なサービスや仕組みに組み込むことが求められる。
 本講演では、理学療法におけるテクノロジー活用の現状を概説し、日常生活下のデータを活用した評価および介入から、より多くの対象者への展開までの論点を整理する。テクノロジーを理学療法の単なる代替として捉えるのではなく、その特性を活かしながら、専門的判断やヒューマンタッチと組み合わせて用いることが重要である。個別の実践の質を保ちつつ、より多くの対象者へ展開する上で、テクノロジーと理学療法士の関わりについて理解を深め、それぞれの実践を考える機会としたい。