講演情報

[JP-05]深吸気時疼痛を呈した慢性背部痛に対し肋椎関節機能障害に着目した一症例

*金本 昌久1、宮﨑 純弥2 (1. 京都翔医会 洛西 西京都クリニック、2. 京都橘大学 健康科学部 理学療法学科)

キーワード:

肋椎関節、深吸気時疼痛、不良姿勢

【症例紹介】
症例は、30代女性で、職業は介護福祉士。外傷などの既往もなかった。発症経過は、約7年前に子供を抱っこした時に右背部痛を自覚し、症状には日内変動があったが約7年間持続し大きな改善は認めなかった。呼吸器や循環器症状は特に認められず、整形外科を受診し、MRIを撮影したが病的所見はなく、右凸の側弯を指摘された。
【評価とリーズニング】
症状の特性は、右背部のズキっとした痛みでNRS5。夜間に疼痛が出現する日もあった。悪化要因は深吸気で、「肺に空気が入らない感じと突っ張ったような痛み」と訴えがあった。咳などでの悪化は認めなかった。軽減要因は、温熱と頬杖をつく姿勢で軽減された。神経学的異常所見を認めず、神経由来の可能性は低いと判断した。その他、red flagに該当する所見は認められなかった。姿勢観察において、立位前額面で頭部左傾斜、右肩甲帯下制、上腕骨内旋位。立位矢状面において、頚椎前弯の減少、骨盤前傾、腰椎前弯増強、膝関節過伸展であった。次に、症状局在化を行った。胸椎のみの運動では疼痛は誘発されず、深吸気でのみ症状が誘発された。そこで、深吸気時に疼痛部位であった右第4・5肋椎関節の離開を促すように徒手的操作を行ったところ、症状の即時的軽減を認めた。圧痛は、右第4・5肋椎関節、右菱形筋、右僧帽筋上部線維に認めた。Joint playでは右第4・5肋椎関節に低可動性を認めた。また、呼吸に関連して腋窩・剣状突起・第10肋骨で胸郭可動性を測定した。胸郭拡張差は、腋窩5.3㎝、剣状突起5.0㎝、第10肋骨3.5㎝であった。下部胸郭可動性低下も認めたが、疼痛部位および徒手検査所見から、右第4・5肋椎関節機能障害が主要な症状に関与している可能性を考え、介入を行った。
【介入内容と結果】
試験治療として、右第4・5肋椎関節に対し、Grade IIのfacet tractionを実施し、深吸気時疼痛は即時的に消失した。短期治療として、胸椎伸展可動性改善と姿勢修正を目的に過緊張筋への軟部組織モビライゼーションを実施した。介入3回目で、夜間の疼痛は消失し、深吸気時疼痛も軽減した。長期治療では、home exとして、胸椎可動性向上を目的にストレッチポール上での運動を指導した。
【考察】
本症例では、右凸側弯に伴う胸郭アライメント変化により、肋骨運動の協調性が低下し、右第4・5肋椎関節の低可動性が生じた可能性が考えられた。深吸気時には同関節の離開不足により疼痛が誘発されたと推察した。肋椎関節は呼吸時の胸郭運動に重要な役割を担うことが報告されており、本症例でも同関節の機能障害が疼痛に関与した可能性が示唆された。深吸気時疼痛を呈する症例では、肋椎関節機能を評価することの重要性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、対象者に文書および口頭で説明し、同意を得た。