講演情報
[JP-16]腰椎椎間板ヘルニア術後に症状が再燃した一症例に対する胸腰筋膜および坐骨神経滑走性操作の有効性
*福田 圭菜1、青木 敦志2、瀬崎 唯1、白石 将史3 (1. 奥天神白石クリニック整形外科・リハビリテーション科 リハビリテーション科、2. 白石クリニック整形外科・内科・消化器内科 リハビリテーション科、3. 白石クリニック整形外科・内科・消化器内科 整形外科)
キーワード:
腰椎椎間板ヘルニア術後、胸腰筋膜、坐骨神経
【症例紹介】
50歳代男性,職業はスーツケース販売の営業職.右L5/S1椎間板ヘルニア(LDH)に対し内視鏡下摘出術を施行され,術後15日より当院にて外来リハビリ開始.術後5ヶ月で右殿部の中央〜外側部に出現していた疼痛・痺れは軽快していたが,術後6ヶ月に右殿部痛が再燃し,術後9ヶ月に右殿部痛の増悪および痺れの再燃を認めた.症状は通勤での長時間座位時,スーツケースのピッキング(スーツケースを箱から取り出す)作業時に出現した.問診より,術後5ヶ月以降は繁忙期でピッキング動作の回数が増加していたことが確認された.
【評価とリーズニング】
術後9ヶ月の初期評価にて,NRSは7/10,指床間距離(FFD)は17cmであった.右殿部にPalm signを認め,右胸腰筋膜(TLF)に圧痛を認めた.疼痛除去テスト(成田,2015)に則り,右TLFの滑走操作後,体幹前屈運動時痛がNRS0へ即時的に軽減したため,TLFを含む筋筋膜性腰痛の関連を推察した.また右殿部の痺れに対し整形外科的テストを行った結果,slump testは右で陽性,SLR testとbonnet testは陰性,S L R可動域は左右ともに70°であったことから,神経系の関与も考えられた. 本症例は通勤時の長時間座位保持によってTLFに持続的な伸張ストレスが生じていたことに加え,ピッキング作業では中腰位で右下肢を軸とした体幹の回旋運動を反復していた.これによりTLFへ剪断ストレスが加わり,解剖学的に連結している大殿筋へ影響が波及し,右殿部痛が引き起こされた可能性がある.さらに,LDH術後は残存していた坐骨神経を含めた神経系の滑走性低下や機械的感受性亢進が認められることが多い.本症例はslump test陽性所見およびslump test肢位でのスライダーテクニック(SST)によって症状の軽減を認めたことから、神経系の滑走性低下が示唆され,ピッキング作業の反復負荷により右殿部の痺れの再燃につながったと考えた.
【介入内容と結果】
介入は,TLFの滑走性改善を目的に滑走操作およびストレッチングを実施し,坐骨神経の滑走性改善を目的にSSTを実施した.術後10ヶ月の最終評価では,体幹前屈運動時の右殿部痛は突っ張り感に変化し,NRSは0/10となった.TLFの圧痛は消失し,FFDは7cmへ改善した.slump testは 陰性となり,仕事中の痺れも消失した.
【考察】
本症例では,TLFの滑走操作およびストレッチング,SSTにより,右殿部痛と痺れの改善を認めた.LDH術後に再燃した症状に対して,職業特異的動作を踏まえ,TLFおよび坐骨神経の滑走性に着目した介入の有効性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例発表は,ヘルシンキ宣言に基づき,患者様に発表内容を十分に説明し,口頭にて同意を得た.
50歳代男性,職業はスーツケース販売の営業職.右L5/S1椎間板ヘルニア(LDH)に対し内視鏡下摘出術を施行され,術後15日より当院にて外来リハビリ開始.術後5ヶ月で右殿部の中央〜外側部に出現していた疼痛・痺れは軽快していたが,術後6ヶ月に右殿部痛が再燃し,術後9ヶ月に右殿部痛の増悪および痺れの再燃を認めた.症状は通勤での長時間座位時,スーツケースのピッキング(スーツケースを箱から取り出す)作業時に出現した.問診より,術後5ヶ月以降は繁忙期でピッキング動作の回数が増加していたことが確認された.
【評価とリーズニング】
術後9ヶ月の初期評価にて,NRSは7/10,指床間距離(FFD)は17cmであった.右殿部にPalm signを認め,右胸腰筋膜(TLF)に圧痛を認めた.疼痛除去テスト(成田,2015)に則り,右TLFの滑走操作後,体幹前屈運動時痛がNRS0へ即時的に軽減したため,TLFを含む筋筋膜性腰痛の関連を推察した.また右殿部の痺れに対し整形外科的テストを行った結果,slump testは右で陽性,SLR testとbonnet testは陰性,S L R可動域は左右ともに70°であったことから,神経系の関与も考えられた. 本症例は通勤時の長時間座位保持によってTLFに持続的な伸張ストレスが生じていたことに加え,ピッキング作業では中腰位で右下肢を軸とした体幹の回旋運動を反復していた.これによりTLFへ剪断ストレスが加わり,解剖学的に連結している大殿筋へ影響が波及し,右殿部痛が引き起こされた可能性がある.さらに,LDH術後は残存していた坐骨神経を含めた神経系の滑走性低下や機械的感受性亢進が認められることが多い.本症例はslump test陽性所見およびslump test肢位でのスライダーテクニック(SST)によって症状の軽減を認めたことから、神経系の滑走性低下が示唆され,ピッキング作業の反復負荷により右殿部の痺れの再燃につながったと考えた.
【介入内容と結果】
介入は,TLFの滑走性改善を目的に滑走操作およびストレッチングを実施し,坐骨神経の滑走性改善を目的にSSTを実施した.術後10ヶ月の最終評価では,体幹前屈運動時の右殿部痛は突っ張り感に変化し,NRSは0/10となった.TLFの圧痛は消失し,FFDは7cmへ改善した.slump testは 陰性となり,仕事中の痺れも消失した.
【考察】
本症例では,TLFの滑走操作およびストレッチング,SSTにより,右殿部痛と痺れの改善を認めた.LDH術後に再燃した症状に対して,職業特異的動作を踏まえ,TLFおよび坐骨神経の滑走性に着目した介入の有効性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本症例発表は,ヘルシンキ宣言に基づき,患者様に発表内容を十分に説明し,口頭にて同意を得た.
