講演情報

[KOSY1_02]理学療法の専門性を育む臨床実習への挑戦―養成校教員の立場から―

田中 智哉 (京都医健専門学校 理学療法科)
略歴(主な学歴・職歴)
2016年 佛教大学 保健医療技術学部 理学療法学科 卒業
2016年 市立福知山市民病院 リハビリテーション科 入職
2022年 畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程 修了 修士 (健康科学)
2023年 畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 在学中
2026年 京都医健専門学校 理学療法科 専任教員
関連資格
運動器認定理学療法士
学術研究業績(主な論文・表彰・著書など)
【論文】
田中智哉, 三木貴弘, 樋口大輔. (2021). 両膝痛に対して膝タナ障害と診断された20代男性―生物心理社会モデルによる評価と痛みの神経生理学的教育を中心とした理学療法の実施―. 理学療法学, 48(1), 87-94.
Tanaka, T., Hayashida, K., Morioka, S. (2022). Verbal Suggestion Modulates the Sense of Ownership and Heat Pain Threshold During the "Injured" Rubber Hand Illusion. Front. Hum. Neurosci., 16, 837496.
【書籍】
田中智哉. (2025). 第5章 疼痛患者に対する臨床評価・治療の実践(変形性膝関節症・理学療法). 重藤隼人 (編), 疼痛リハビリテーション―病態メカニズム・モデルに基づく評価・治療戦略 (pp. 158–166). メジカルビュー社.
関連領域社会活動(学会理事など)
日本神経理学療法学会 京都地方会 部員
京都府理学療法士会 地域局 京都市中支部 部員
理学療法士は, 臨床現場において理学療法を提供するだけでなく, その効果を検証することが求められる. Sackett (1997) が示したevidence-based medicine (EBM) は, 臨床疑問の定式化, 情報収集, 批判的吟味を経てエビデンスを臨床に適用し, さらにその実践を振り返り評価するまでを含む一連のプロセスであると定められている. 理学療法学教育モデル・コア・カリキュラム (2019) においても, 「エビデンスに基づく理学療法について理解する」が卒前教育の学修項目の一つとして挙げられている. このため, 理学療法士には, 卒前教育の段階からEBMに基づく臨床実践の基礎を養い, 自らのEBM実践が適切であったかを検証しながら, その実践を改善し続けることが求められる.
EBM実践の最終的な目的は, 対象者のアウトカムを改善することである. EBMの実践能力に対する体系的な評価枠組みであるCREATEフレームワーク (Tilson et al. 2011) では, 学習者の知識・技能だけでなく, 臨床行動や対象者への利益まで含めて評価する必要性が示されている. 一方で, 対象者のアウトカムには多様な交絡因子が関与するため, その評価は容易ではない. そのため, 対象者のアウトカムの変化を適切に評価するための知識が求められる.
対象者のアウトカムの変化が, 自らの理学療法によるものかを適切に判断するためには, 研究方法論に関する知識が不可欠である. 例えば, 交絡因子を統制するための研究デザインや統計解析などが挙げられる. 近年では, 個々の対象者における介入効果を検証するために, single-case experimental designなどの研究手法に関する知識も重要となっている. 理学療法士は, これらの知識を臨床現場の状況に応じて活用し, 自らの理学療法が対象者のアウトカムに与える影響を検証することが重要である.
本シンポジウムでは, EBMの実践を通じて理学療法士としての専門性を育むため, 本校と臨床実習施設が共同で取り組んだ, 学生の症例研究への参画に関する教育的取り組みを中心に紹介する. 実習前に実施した研究方法論に関する教育や, 臨床実習中に得られた学生の声を踏まえ, これらの取り組みが学生の学習や専門性の育成に与えた影響について考察する. 本シンポジウムが, 京都府下における卒前・卒後教育のあり方を考える契機となり, 理学療法士の専門性を育む教育体制の構築につながることを期待している.