講演情報

[JTS-01]物理療法のエネルギーを理解すると徒手療法は変わる―ラジオ波療法から学ぶエネルギー選択の考え方―

髙橋 智士 (酒井医療(株)リハビリテーション推進事業部
札幌医科大学保健医療学部特別講師
昭和医科大学保健医療学部客員講師)
<略歴>
1997年 文教大学 文学部  卒業
1997年 伊藤超短波(株)メディカル事業部入社
2013年 酒井医療(株)リハビリテーション推進事業部入社
2022年 札幌医科大学保健医療学部特別講師登録
2025年 昭和医科大学保健医療学部客員講師登録
近年、理学療法における物理療法は、単独で用いる治療手段ではなく、徒手療法や運動療法の効果を高めるための前処置、あるいは治療を促進する手段として、その価値が改めて見直されている。一方、臨床では「どのエネルギーを、どの組織・病態に対して選択するか」という視点が、より重要となっている。
 物理療法で用いられる代表的なエネルギーには、電流、温熱、衝撃波があり、それぞれに特性と得意分野がある。電流刺激は神経・筋機能へのアプローチ、温熱刺激は筋・筋膜・靱帯・関節包など軟部組織の柔軟性や組織間滑走性の改善、衝撃波は腱障害、骨病変、石灰化病変、痙縮などへの応用が期待される。物理療法において重要なのは、個々の治療機器を理解することではなく、それぞれのエネルギー特性を理解し、病態や組織特性に応じて適切に選択することである。
 本セッションで取り上げるラジオ波療法は、300~500kHz(0.3~0.5MHz)の高周波電流を利用し、生体内で電気エネルギーを熱エネルギーへ変換する温熱療法である。近年では、理学療法士養成校が備えるべき物理療法機器の指定品目にも位置付けられており、臨床のみならず理学療法教育においても重要性が高まっている。一方で、導入状況や教育環境は養成校によって異なることから、本療法の原理や特徴、臨床応用について理解を深める機会はますます重要になっている。
 本来であれば電流刺激や衝撃波を含めた各エネルギーの特性についても紹介したいところであるが、本ハンズオンでは、徒手療法との親和性が高く、臨床で即実践しやすい温熱刺激、とりわけラジオ波療法に焦点を当てる。ラジオ波療法はCET(Capacitive Electric Transfer)とRET(Resistive Electric Transfer)の2つのモードを有し、組織特性や治療目的に応じて浅層から深部まで加温できる。さらに、筋収縮、関節運動、圧迫などのストレス負荷を組み合わせることで目的部位へ熱を誘導できることや、術者の手を介して温熱刺激を伝達する手技併用法(ヒートハンド)は、徒手療法との高い親和性を有する。
 本ハンズオンでは、ラジオ波療法の基礎理論とCET・RETの特徴を概説し、①ストレス負荷を利用した熱誘導とストレッチ・運動療法との併用、②ヒートハンドによる徒手療法との併用を実践形式で紹介する。ラジオ波療法の習得だけを目的とするのではなく、エネルギー特性を理解することで徒手療法の可能性をさらに広げるという視点を共有したい。物理療法と徒手療法を対立する概念として捉えるのではなく、それぞれの特性を理解し相乗効果を引き出すことで、臨床における新たな治療戦略を提案したい。