講演情報
[KP_02]腸骨筋の関与に着目した理学療法により改善を認めた大腿神経症状の一症例 ~腸骨筋の機能解剖に着目して~
*田路 桜弥1、為沢 一弘1、松本 裕司1、團野 翼1、高田 ゆい1、佐々木 拓馬1、渡辺 稜甫1、樋口 直彦2 (1. なか整形外科 リハビリテーション科、2. なか整形外科 整形外科)
キーワード:
大腿神経、腸骨筋、筋裂孔
【はじめに】
大腿神経(FN)の好発絞扼部位は筋裂孔における腸腰筋(IP)と鼠径靱帯間と考えられている.しかし,腸骨筋(IM) は独自の腱線維を有していることから,筋裂孔周囲における FN の絞扼を検討する際には IM,大腰筋(PM)は分けて考えるべきである.今回,解剖学的特徴に注目して理学療法を実施し,IM 独自の FN 固有領域の症状改善に効果的であったことを経験したため報告する.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,症例に発表内容,個人情報保護内容,同意と撤回について十分に説明し,書面にて同意を得た.
【症例紹介】
70 代女性,右大腿前面に疼痛を認め当院を受診し,腰部脊柱管狭窄症(LCS)と診断され,理学療法を開始した.
【評価とリーズニング】
初期評価で右大腿前面に NRS10/10,殿部深層に NRS3/10 の疼痛を認めた.体幹伸展及び他動股関節伸展で同部位に放散痛が誘発された.股関節伸展 ROM は右-15°左 0°,MMT は IP 右 4 左 5、大腿四頭筋(Quad)右 5 左 5 であったが,股関節伸展位では Quad 右 3 左 5 であった.圧痛は PM,IM に認め,Thomas test や Femoral Nerve Stretch (FNS) test は陽性であったが,Patrick test や Gaenslen test は陰性であり,間欠性破行や体幹前・後屈,側屈,回旋の腰部症状,椎間関節の圧痛は認めなかったことから,LCS や他の腰椎疾患由来の神経症状は否定的であったため除外した。また Tinel sign は筋裂孔部での IP 前面と筋裂孔より近位の PM・IM 間で認めた.
【介入内容と結果】
以上より,当初は L2-4 脊髄神経前枝が PM を貫通する解剖学的特徴から,PM による圧迫性神経絞扼を疑い PM に対して理学療法を実施したが,疼痛の改善は認めなかった.そのため,IM の解剖学的特徴に着目し,IM の柔軟性改善を目的に理学療法を実施した.その結果,右大腿前面 NRS1/10,殿部深層 NRS0/10 と改善した.股関節伸展 ROM 右-5°,股関節伸展位 Quad の MMT も右 5 と改善した.Thomas test と FNS test も陰性となり,PM,IM の圧痛及び Tinel sign も消失した.
【考察】
本症例は FN が筋裂孔部での IM 前面および筋裂孔より近位の PM・IM 間で IM に圧迫されたことによる絞扼性神経障害であると考えた.Nader らによると,FN は PM 貫通後,PM・IM 間を下降し,筋裂孔部で IM 前方を走行すると報告している.一般的に,PM と IM は鼠径靱帯下で共同腱となり小転子へ停止するため,筋裂孔部での FN 症状は IP による圧迫と解釈されることが多い.しかし,筋裂孔部には IM 独自の腱線維が存在するため,FN 症状を呈する症例においては PM 貫通部か筋裂孔部での IM 単独によるものかを鑑別することが重要であると考える。また、PM が関与する場合には FN 固有領域に加え,より遠位への症状出現の可能性も考慮する必要がある.上記より本症例では,当初 PM への介入で症状の改善を認めなかった一方で,IM の柔軟性改善を目的とした理学療法を実施した結果,症状が改善した.
大腿神経(FN)の好発絞扼部位は筋裂孔における腸腰筋(IP)と鼠径靱帯間と考えられている.しかし,腸骨筋(IM) は独自の腱線維を有していることから,筋裂孔周囲における FN の絞扼を検討する際には IM,大腰筋(PM)は分けて考えるべきである.今回,解剖学的特徴に注目して理学療法を実施し,IM 独自の FN 固有領域の症状改善に効果的であったことを経験したため報告する.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき,症例に発表内容,個人情報保護内容,同意と撤回について十分に説明し,書面にて同意を得た.
【症例紹介】
70 代女性,右大腿前面に疼痛を認め当院を受診し,腰部脊柱管狭窄症(LCS)と診断され,理学療法を開始した.
【評価とリーズニング】
初期評価で右大腿前面に NRS10/10,殿部深層に NRS3/10 の疼痛を認めた.体幹伸展及び他動股関節伸展で同部位に放散痛が誘発された.股関節伸展 ROM は右-15°左 0°,MMT は IP 右 4 左 5、大腿四頭筋(Quad)右 5 左 5 であったが,股関節伸展位では Quad 右 3 左 5 であった.圧痛は PM,IM に認め,Thomas test や Femoral Nerve Stretch (FNS) test は陽性であったが,Patrick test や Gaenslen test は陰性であり,間欠性破行や体幹前・後屈,側屈,回旋の腰部症状,椎間関節の圧痛は認めなかったことから,LCS や他の腰椎疾患由来の神経症状は否定的であったため除外した。また Tinel sign は筋裂孔部での IP 前面と筋裂孔より近位の PM・IM 間で認めた.
【介入内容と結果】
以上より,当初は L2-4 脊髄神経前枝が PM を貫通する解剖学的特徴から,PM による圧迫性神経絞扼を疑い PM に対して理学療法を実施したが,疼痛の改善は認めなかった.そのため,IM の解剖学的特徴に着目し,IM の柔軟性改善を目的に理学療法を実施した.その結果,右大腿前面 NRS1/10,殿部深層 NRS0/10 と改善した.股関節伸展 ROM 右-5°,股関節伸展位 Quad の MMT も右 5 と改善した.Thomas test と FNS test も陰性となり,PM,IM の圧痛及び Tinel sign も消失した.
【考察】
本症例は FN が筋裂孔部での IM 前面および筋裂孔より近位の PM・IM 間で IM に圧迫されたことによる絞扼性神経障害であると考えた.Nader らによると,FN は PM 貫通後,PM・IM 間を下降し,筋裂孔部で IM 前方を走行すると報告している.一般的に,PM と IM は鼠径靱帯下で共同腱となり小転子へ停止するため,筋裂孔部での FN 症状は IP による圧迫と解釈されることが多い.しかし,筋裂孔部には IM 独自の腱線維が存在するため,FN 症状を呈する症例においては PM 貫通部か筋裂孔部での IM 単独によるものかを鑑別することが重要であると考える。また、PM が関与する場合には FN 固有領域に加え,より遠位への症状出現の可能性も考慮する必要がある.上記より本症例では,当初 PM への介入で症状の改善を認めなかった一方で,IM の柔軟性改善を目的とした理学療法を実施した結果,症状が改善した.
