講演情報
[KP_05]外傷性骨盤骨折保存療法後に変形性股関節症を呈し、左人工股関節全置換術を施行した一症例
*井上 涼凪1、坂口 早希1、相馬 寛人1、上島 圭一郎2 (1. 京都地域医療学際研究所 がくさい病院 スポーツリハビリテーション科、2. 京都地域医療学際研究所 がくさい病院 整形外科部)
キーワード:
人工股関節全置換術、骨盤骨折、術後リハビリテーション
【症例紹介】
症例は約40年前に交通事故で骨盤骨折を受傷した後、左変形性股関節症と診断された70代女性である。手術目的にて当院を受診し、3ヶ月間の術前リハビリテーションを行った後、サポートリングを用いて寛骨臼の再建を併用した、左人工股関節全置換術(以下、THA)を施行した。術後リハビリテーションは翌日より開始し、術後1ヶ月で退院した後は外来リハビリテーションを週2回の頻度で行った。併存疾患は、両側性変形性膝関節症でKellgren-Lawrence分類は右3(内側型)、左4(外側型)であった。
【評価とリーズニング】
術後1.5ヶ月の検査・測定結果を示す。股関節可動域(以下、ROM)は屈曲97°/114°(患側/健側、以下同じ)、伸展-20°/-9°、外旋15°/28°、内旋35°/16°、外旋(腹臥位)0°/38°、内旋(腹臥位)68°/33°、Thomas testは陽性であった。股関節筋力は、徒手筋力検査法で屈曲4/4、伸展2/2、外転2/4、外旋(股関節屈曲45°位)2/4、外旋(股関節屈曲10°位)2/4であった。その他、術前より第四腰椎から第一仙椎領域で感覚鈍麻がみられた。歩行は右T字杖を使用し、10m歩行が、19.26秒、25歩であった。歩行の特徴として、左荷重応答期に股関節内転・内旋増大、膝関節外反位を呈し、左立脚中・終期に体幹後傾・腰椎前弯が増大していた。股関節伸展・外旋ROM制限、股関節伸展・外旋筋筋力の低下に伴う歩容の問題から、歩行速度が低下していると考えた。
【介入内容と結果】
ROM制限に対し徒手療法、ストレッチ、股関節伸展、外旋、外転の各エクササイズを実施した。神経因性の筋力低下が疑われる大殿筋、外旋筋に対して物理療法を行った。術後2ヶ月では股関節ROMが屈曲103°/120°、伸展-6°/7°、外旋15°/30°、内旋35°/22°、外旋(腹臥位)8°/45°、内旋(腹臥位)65°/25°、Thomas testは軽度陽性、股関節筋力が屈曲5/5、伸展2/2、外転3/4、外旋(股関節屈曲45°位)2/5、外旋(股関節屈曲10°位)2/5であった。10m歩行は、11.72秒、20歩であった。左立脚中期・終期に生じていた体幹後傾・腰椎前弯は減少し、股関節伸展角度が増大していた。
【考察】
THAの術後では、約1ヶ月で股関節ROMの改善する例が多い一方で、本症例は著明な股関節伸展・外旋ROM制限が残存した。いずれも、骨盤骨折後の瘢痕化や癒着の残存、手術侵襲に伴う浮腫や炎症により伸張性低下が生じた軟部組織による制限と考えた。股関節伸展・外旋筋力の低下も著しく、骨折後に生じた神経学的問題の影響が予測された。これらに対し、物理療法も伴わせた介入の結果、ROM、筋力が向上し、代償動作の軽減と歩行速度の改善につながったと考えられる。骨盤骨折の既往を有するTHA症例では、骨盤骨折後に残存する軟部組織および神経学的問題に着目した評価と介入が重要であると考えられた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本症例報告の作成に当たり、対象者には趣旨と個人情報保護に配慮する旨を十分に説明し、同意を得た。また、個人が特定されないよう十分な匿名化を行った。
症例は約40年前に交通事故で骨盤骨折を受傷した後、左変形性股関節症と診断された70代女性である。手術目的にて当院を受診し、3ヶ月間の術前リハビリテーションを行った後、サポートリングを用いて寛骨臼の再建を併用した、左人工股関節全置換術(以下、THA)を施行した。術後リハビリテーションは翌日より開始し、術後1ヶ月で退院した後は外来リハビリテーションを週2回の頻度で行った。併存疾患は、両側性変形性膝関節症でKellgren-Lawrence分類は右3(内側型)、左4(外側型)であった。
【評価とリーズニング】
術後1.5ヶ月の検査・測定結果を示す。股関節可動域(以下、ROM)は屈曲97°/114°(患側/健側、以下同じ)、伸展-20°/-9°、外旋15°/28°、内旋35°/16°、外旋(腹臥位)0°/38°、内旋(腹臥位)68°/33°、Thomas testは陽性であった。股関節筋力は、徒手筋力検査法で屈曲4/4、伸展2/2、外転2/4、外旋(股関節屈曲45°位)2/4、外旋(股関節屈曲10°位)2/4であった。その他、術前より第四腰椎から第一仙椎領域で感覚鈍麻がみられた。歩行は右T字杖を使用し、10m歩行が、19.26秒、25歩であった。歩行の特徴として、左荷重応答期に股関節内転・内旋増大、膝関節外反位を呈し、左立脚中・終期に体幹後傾・腰椎前弯が増大していた。股関節伸展・外旋ROM制限、股関節伸展・外旋筋筋力の低下に伴う歩容の問題から、歩行速度が低下していると考えた。
【介入内容と結果】
ROM制限に対し徒手療法、ストレッチ、股関節伸展、外旋、外転の各エクササイズを実施した。神経因性の筋力低下が疑われる大殿筋、外旋筋に対して物理療法を行った。術後2ヶ月では股関節ROMが屈曲103°/120°、伸展-6°/7°、外旋15°/30°、内旋35°/22°、外旋(腹臥位)8°/45°、内旋(腹臥位)65°/25°、Thomas testは軽度陽性、股関節筋力が屈曲5/5、伸展2/2、外転3/4、外旋(股関節屈曲45°位)2/5、外旋(股関節屈曲10°位)2/5であった。10m歩行は、11.72秒、20歩であった。左立脚中期・終期に生じていた体幹後傾・腰椎前弯は減少し、股関節伸展角度が増大していた。
【考察】
THAの術後では、約1ヶ月で股関節ROMの改善する例が多い一方で、本症例は著明な股関節伸展・外旋ROM制限が残存した。いずれも、骨盤骨折後の瘢痕化や癒着の残存、手術侵襲に伴う浮腫や炎症により伸張性低下が生じた軟部組織による制限と考えた。股関節伸展・外旋筋力の低下も著しく、骨折後に生じた神経学的問題の影響が予測された。これらに対し、物理療法も伴わせた介入の結果、ROM、筋力が向上し、代償動作の軽減と歩行速度の改善につながったと考えられる。骨盤骨折の既往を有するTHA症例では、骨盤骨折後に残存する軟部組織および神経学的問題に着目した評価と介入が重要であると考えられた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本症例報告の作成に当たり、対象者には趣旨と個人情報保護に配慮する旨を十分に説明し、同意を得た。また、個人が特定されないよう十分な匿名化を行った。
