講演情報

[KP_06]早期転院を契機に独歩獲得に至った多関節置換術患者の一症例

*山中 優華1、長川 英樹1 (1. 壬生大路病院)

キーワード:

多関節置換術、股関節安定性、多職種連携

【症例紹介】
60代男性。ステロイド治療を要する関節リウマチによりTHA及びTKAを施行された症例を担当した。既往歴に右上腕骨頭壊死、両側腱板断裂を有する。THA術後、両肩関節、膝関節痛の増悪により理学療法が進行しなかった。多職種カンファレンスにて治療方針を検討した結果、自宅復帰を目的に急性期病院へ再入院となりTKAが施行された。TKA施行後は膝関節痛軽減及び股関節機能向上認め歩行能力向上した。その結果独歩獲得し退院に至った。
【評価とリーズニング】
THA術後は両膝関節に著明な炎症、腫脹を認め疼痛NRS 9、夜間痛による睡眠障害もあり歩行、筋力強化練習は十分に実施できなかった。ROM(右/左)股関節屈曲90°/90°、膝関節屈曲120°/110°、伸展-50°/-40°、MMTでは股関節屈曲3/3、膝関節伸展3/3、股関節外転は2/2であった。TKA後は疼痛NRS1、ROMは膝屈曲120°/125°、伸展-15°/-15°であった。MMTでは股関節屈曲3/3、股関節伸展3/3、股関節外転2/2、外旋3/3、膝関節伸展4/4と膝関節伸展可動域と膝関節伸展筋の筋力が向上していた。立位ではウィンドスウェプト変形(左膝内反、右膝外反)と左下肢の棘果長は右に比較し3 cm短縮を認めた。歩行分析ではMstからTstにかけて側方動揺が大きく平行棒内での支持を要した。これはMstでの中殿筋、大殿筋、外旋六筋による求心位保持の機能不全、およびTstでの腸腰筋の遠心性収縮不良が原因と考えた。また、運動覚が2/5と低下しており「どのように歩いているかイメージ出来ない」と訴えから①股関節周囲の筋力低下②運動覚の低下③脚長差3点を問題とした。
【介入内容と結果】
歩行器使用による上肢依存が既往の腱板断裂による肩関節痛を助長していた為下肢主体の支持戦略にする為杖歩行への移行を図った。介入では中殿筋、大殿筋、外旋六筋の筋力強化及び腸腰筋の遠心性収縮練習を実施し歩行を認識させるため視覚フィードバックを用いた運動学習を併用した。脚長差に対しては左踵の補高及びウエッジ調節を行った。その結果、歩行時の側方動揺は軽減し下肢アライメントも改善、独歩獲得に至った。
【考察】
独歩獲得に至った最大の要因は多職種カンファレンスによる早期転院の判断にあったと考える。保存的経過を待たずTKAを施行したことで膝痛が軽減し中殿筋や外旋六筋といった股関節安定化に必要なトレーニングが可能となった。その結果立脚期の側方安定性と推進力向上に繋がったと考える。加えて視覚フィードバックを併用したことで運動覚の低下を補った。以上により多職種連携による早期手術の判断とTKA後の理学療法による相乗効果が多関節置換術の複雑な病態における歩行能力改善に寄与したと考えられる。
【倫理的配慮、説明と同意】対象者には本発表の趣旨を説明し同意を得た。また、個人情報の匿名化を徹底し、開示すべき利益相反はない。