講演情報
[KP_07]受傷後に医療機関を受診せず、状態が悪化して手術となった右大腿骨頸部骨折の一例
*岩城 隼人1、四方 健人1、福井 宣善1、宮﨑 博子1 (1. 京都桂病院 リハビリテーションセンター)
キーワード:
ADL指導、疼痛回避姿勢、Cumulated Ambulation Score
【目的】
大腿骨頸部骨折受傷後に、疼痛を抱えながらも家事や介護などの日常生活を継続して症状が増悪、受傷7日後に人工骨頭置換術(BHA:Hardinge approach)を施行された症例を経験した。術式特性に基づくリスク管理を前提とした機能的運動療法と入院早期から患者教育及びADL指導を併行した結果、良好な経過を得たため報告する。
【症例紹介】
70代後半女性。右大腿骨頸部骨折(GardenⅢ)。受傷前ADLは屋外独歩自立で認知機能は良好。家庭内役割の責任感が極めて強く、自身の症状よりも優先する行動特性(感化型)が疑われた。
【評価とリーズニング】
POD1からPOD7の変化を示す。体動時痛NRS:5→1へ改善。術側ROMは股関節伸展:-10°→-10°で制限残存。POD7の筋力(Nm/kg:術/健)は股関節外転:0.30/0.38、膝関節伸展:0.19/1.13。最大荷重率は93.1%で杖歩行開始基準を満たした。POD6で歩行器歩行が自立し、Cumulated Ambulation Score(CAS)は3days:13点、5days:25点、7days:37点と早期歩行自立が予測されたが、POD9のT字杖歩行でTrendelenburg徴候を認め、TUG:21.24s、歩行速度:0.69m/sであった。 受傷後の生活で定着した股関節屈曲位の疼痛回避姿勢と術式に伴う中殿筋の侵襲により、股関節外転筋機能低下と代償歩行を呈しており、転倒リスクと縫合不全リスクが懸念された。家庭内役割の復帰希望が強く退院後も過活動が予測されるため、機能的アプローチに加え生活指導の徹底が必要と考えた。
【内容と結果】
股関節伸展ROM拡大と股関節外転筋力向上を目標とし、加えて視覚的フィードバックを用いた荷重練習・歩行練習を実施し、立脚期における骨盤制御改善を促した。脱臼回避肢位、床の物拾い、階段昇降等の具体的ADL指導を早期より実施して、疼痛に応じた活動量調整の指導を徹底した。 POD17最終評価時、疼痛NRS:0、股関節伸展:15°、筋力(Nm/kg:術/健)は股関節外転:0.38/0.60、膝関節伸展:0.37/1.42と改善。最大荷重率は100%となり異常歩行は軽減。TUG:13.24s、歩行速度:0.86m/sとなり、屋内外T字杖歩行自立で自宅退院した。退院後のLife-Space Assessment(LSA)は48点であった。 退院後は他院で週1回の外来リハビリテーションを継続。術後1.5ヶ月で屋外独歩を獲得し家事全般が自立、術後3ヶ月でLSAは120点となり、転倒・脱臼なく連続1時間の歩行や家族の身体介助、ボランティア等、受傷前の高い活動レベルへ安全に復帰した。
【考察】
本症例はCAS上で早期歩行自立が予測されたが、術前から存在した不良姿勢や術侵襲によりTrendelenburg徴候等の質的低下を呈した。活動意欲の高い本症例に対し、転倒リスクと中臀筋縫合不全リスク抑えるためには、機能改善による歩行安定性獲得を図り、術式特性に基づくリスク管理の観点から患者教育及びADL指導が必要であった。活動を一律に制限せず、疼痛に応じた自己調整を指導し、セルフマネジメント能力を高めたことが、術後3ヶ月の合併症のない高い社会参加(LSA120点)に繋がったと考える。 CAS等の指標に加え、歩行の質的評価や患者の行動特性を総合的に捉えたリハビリテーションが高活動なBHA術後患者の安全な生活再建に重要である。
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に際し、ヘルシンキ宣言に則り、対象者に対して説明と同意を行い、承諾を得た。
大腿骨頸部骨折受傷後に、疼痛を抱えながらも家事や介護などの日常生活を継続して症状が増悪、受傷7日後に人工骨頭置換術(BHA:Hardinge approach)を施行された症例を経験した。術式特性に基づくリスク管理を前提とした機能的運動療法と入院早期から患者教育及びADL指導を併行した結果、良好な経過を得たため報告する。
【症例紹介】
70代後半女性。右大腿骨頸部骨折(GardenⅢ)。受傷前ADLは屋外独歩自立で認知機能は良好。家庭内役割の責任感が極めて強く、自身の症状よりも優先する行動特性(感化型)が疑われた。
【評価とリーズニング】
POD1からPOD7の変化を示す。体動時痛NRS:5→1へ改善。術側ROMは股関節伸展:-10°→-10°で制限残存。POD7の筋力(Nm/kg:術/健)は股関節外転:0.30/0.38、膝関節伸展:0.19/1.13。最大荷重率は93.1%で杖歩行開始基準を満たした。POD6で歩行器歩行が自立し、Cumulated Ambulation Score(CAS)は3days:13点、5days:25点、7days:37点と早期歩行自立が予測されたが、POD9のT字杖歩行でTrendelenburg徴候を認め、TUG:21.24s、歩行速度:0.69m/sであった。 受傷後の生活で定着した股関節屈曲位の疼痛回避姿勢と術式に伴う中殿筋の侵襲により、股関節外転筋機能低下と代償歩行を呈しており、転倒リスクと縫合不全リスクが懸念された。家庭内役割の復帰希望が強く退院後も過活動が予測されるため、機能的アプローチに加え生活指導の徹底が必要と考えた。
【内容と結果】
股関節伸展ROM拡大と股関節外転筋力向上を目標とし、加えて視覚的フィードバックを用いた荷重練習・歩行練習を実施し、立脚期における骨盤制御改善を促した。脱臼回避肢位、床の物拾い、階段昇降等の具体的ADL指導を早期より実施して、疼痛に応じた活動量調整の指導を徹底した。 POD17最終評価時、疼痛NRS:0、股関節伸展:15°、筋力(Nm/kg:術/健)は股関節外転:0.38/0.60、膝関節伸展:0.37/1.42と改善。最大荷重率は100%となり異常歩行は軽減。TUG:13.24s、歩行速度:0.86m/sとなり、屋内外T字杖歩行自立で自宅退院した。退院後のLife-Space Assessment(LSA)は48点であった。 退院後は他院で週1回の外来リハビリテーションを継続。術後1.5ヶ月で屋外独歩を獲得し家事全般が自立、術後3ヶ月でLSAは120点となり、転倒・脱臼なく連続1時間の歩行や家族の身体介助、ボランティア等、受傷前の高い活動レベルへ安全に復帰した。
【考察】
本症例はCAS上で早期歩行自立が予測されたが、術前から存在した不良姿勢や術侵襲によりTrendelenburg徴候等の質的低下を呈した。活動意欲の高い本症例に対し、転倒リスクと中臀筋縫合不全リスク抑えるためには、機能改善による歩行安定性獲得を図り、術式特性に基づくリスク管理の観点から患者教育及びADL指導が必要であった。活動を一律に制限せず、疼痛に応じた自己調整を指導し、セルフマネジメント能力を高めたことが、術後3ヶ月の合併症のない高い社会参加(LSA120点)に繋がったと考える。 CAS等の指標に加え、歩行の質的評価や患者の行動特性を総合的に捉えたリハビリテーションが高活動なBHA術後患者の安全な生活再建に重要である。
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に際し、ヘルシンキ宣言に則り、対象者に対して説明と同意を行い、承諾を得た。
