講演情報

[KP_09]特発性肺線維症患者に対するセルフマネジメント支援にて排泄動作時の呼吸困難改善を認めた1例

*松本 彩佳1、岡本 辰二1、佐々木 康貴2 (1. 舞鶴共済病院、2. 林病院)

キーワード:

セルフマネジメント支援、特発性肺線維症、運動誘発性低酸素血症

【症例紹介】
80歳代女性.肺炎と診断され入院.特発性肺線維症(IPF),気管支喘息,慢性心不全,間質性膀胱炎(IC)を有し,視覚・内部障害による身体障害者手帳2級を所持.読字には拡大読書器などを使用.入院前ADLは自立.15病日より理学療法開始.
【評価とリーズニング】
初期評価時は, Nagasaki University Respiratory ADL(NRADL) 15点であった.排泄動作ではICによる頻尿を認め,経鼻4L/分で動作は円滑であるが,強い呼吸困難を認めた.排尿後SpO2はmin86%,修正Borg scale 4.加えて「家でも70%台まで下がることはざらにある」といった発言の他,「同居家族へトイレの迷惑をかけたくない」というHOPEが聞かれた. SpO2の著しい低下に加え,自覚症状が出現下であっても連続動作を行なっていた点から行動変容ステージは熟考期と判断した.以上より排泄動作においては,数値的変化から運動誘発性低酸素血症(EID)を呈していたと示唆された.排泄動作時の負担軽減を図る為,セルフマネジメントの獲得を目標とした.
【介入内容と結果】
理学療法介入はコンディショニング,筋力・筋持久力トレーニング,歩行練習を施行.加えて,セルフマネジメント支援としてパンフレットにて病態や低酸素血症のリスク,パルスオキシメーターの使用時の注意点を説明した.また,動作と呼吸の同調,動作の分割,SpO2変化量や自覚的呼吸困難のセルフモニタリング,自主トレーニングを指導.最終評価では, NRADL48点に改善し,経鼻3L/分にて動作速度を調節し休まず遂行可能となり,呼吸困難は消失した.加えて,「88%やな,座って休憩するわ」と数値を指標とした運動休止の判断が可能となった.自己記録上もSpO2が70%台まで低下することは無くなり,行動変容ステージは実行期へと移行した.安静時2L/分,労作時3L/分の在宅酸素療法が処方され,72病日に自宅退院となる.
【考察】本症例は,IPFを背景に排泄動作時のEIDを呈していた.ICを有する本症例において排尿動作は,排尿タイミングが予測困難であり,失禁を回避する為動作を急ぐことに加え,下衣操作や拭く動作など多くの工程を遂行する必要がある.これらが身体負荷を増大させEIDの増悪に関与した可能性が示唆される.呼吸理学療法において,近年ではセルフマネジメント支援の重要性が示されており本症例においても運動療法に加えてセルフマネジメント獲得に向けた介入を行なった.その結果,排泄動作時の呼吸困難改善に加え,低酸素血症時の対応および動作の分割等の自己管理能力が獲得され,行動変容ステージは実行期へと移行し,自宅退院に至った.本症例は視覚的ハンディキャップを有していたものの意欲が高く,セルフマネジメントに対する理解を得られたことが改善要因の一つであると考えられる.今後は,家族を含めた指導や在宅支援に関わる職種への情報共有を行うことで,獲得したセルフマネジメントの長期的な継続へ繋がると考えた.
【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,対象者には本報告の趣旨を十分に説明,書面にて同意を得た.