講演情報

[KP_11]右下腿前面痛により長距離歩行が困難であった右脛骨高原骨折後の一症例

*伊藤 明1,2、楠 貴光1,2、鈴木 俊明1,3 (1. 関西医療大学保健医療学研究科、2. 園部病院リハビリテーション部、3. 関西医療大学)

キーワード:

歩行動作、脛骨高原骨折、腸肋筋

【症例紹介】症例は、右脛骨高原骨折後の70歳代後半の女性である。主訴は長く歩くと右足の前が痛い。ニードを歩行動作の耐久性向上とした。 【評価とリーズニング】長距離歩行時に右下腿前面痛が生じるため、歩行動作の耐久性低下を認めていた。動作観察では、左立脚初期に腰椎左側屈位による骨盤左挙上位に伴い左股関節は内転位で接地した。左立脚中期に更に左股関節内転することに伴い体幹右傾斜し、右足底全面で初期接地するが、右立脚中期にかけて右足部外返しに伴う右下腿外側傾斜が大きく生じ、右下腿前面に疼痛を認めた。このとき右母趾は伸展位であった。検査測定の結果、腰椎左側屈位に対しては、静止時筋緊張検査で左腸肋筋に筋緊張亢進を認めた。さらに、右足部外がえしに伴う右下腿外側傾斜が大きく生じることに対しては、徒手筋力検査で右足の背屈に伴う内返しが段階2、右母趾伸展は段階5であった。また、長距離歩行時の右下腿前面の疼痛は、NRS6であり、部位は右長母指伸筋の筋腹上であった。 【介入内容と結果】理学療法では、左腸肋筋のダイレクトストレッチングを実施し、腰椎左側屈位の改善を図った。さらに、右足部内返しの自動介助運動を実施し、MMT3の筋力が得られてから立位での右側方体重移動時の右足部外返しに伴う右下腿外側傾斜を制動する右足部内返し筋の遠心性収縮での活動を促した。結果、静止時筋緊張検査で左腸肋筋は正常域となり、徒手筋力検査では、右足の背屈に伴う内返しが段階3となった。右母趾伸展は段階5を維持し、下腿前面の疼痛が軽減し、NRSでは2となった。歩行動作の左立脚初期では腰椎左側屈位に伴う骨盤左挙上位は改善し、左立脚中期にかけて左股関節内転に伴う骨盤左側方移動が可能になるとともに、右立脚相での右足部外がえしによる右下腿外側傾斜も減少した。 【考察】歩行動作の耐久性低下が生じた一つ目の要因は、左腸肋筋の筋緊張亢進に伴い左立脚初期に腰椎左側屈による骨盤左挙上位のため、左股関節内転位で接地したことで、骨盤の左側方移動が困難なことであったと考えた。二つ目の要因は、左立脚相での骨盤の左側方移動が困難なことに対して左股関節内転による体幹右傾斜に伴い右立脚相に移行するが、右足部内返しの筋力低下がある中で右足部外返しに伴う右下腿外側傾斜が大きく生じる際、右母趾伸展位であったことから右足部内返し筋のなかでも右長母指伸筋が過剰に活動することであったと考えた。そのため、右長母指伸筋の過剰な活動により右下腿前面の疼痛が生じ、歩行動作の耐久性が低下していたと考えた。よって、本症例の歩行動作の耐久性向上には、左腸肋筋の筋緊張亢進および右足の背屈に伴う内返し筋力低下の両方の問題点に着目し、改善を図ることが重要であった。 【倫理的配慮、説明と同意】 症例に発表の趣旨を説明し、同意を得た。個人情報の保護に十分配慮した。