講演情報

[KP_16]重度感覚障害を呈した免疫性脊髄炎症例に対し環境適応を重視した介入により自宅復帰に至った一症例

*廣野 愛依菜1、東 亜希乃1 (1. 京都民医連あすかい病院)

キーワード:

感覚障害、在宅調整、自己免疫性疾患

【症例紹介】
帯状疱疹後に進行性の筋力低下を認め,免疫性脊髄炎と診断された80代女性である.Th10以下の重度感覚障害と右下肢優位の筋力低下を呈し,発症2か月後に当院へ転院した.既往歴は右膝OA,脊椎圧迫骨折,1型糖尿病である.病前は独居で屋内外は独歩,ADLは自立していた.退院後は息子と同居予定であったが,日中独居となる生活環境で,自宅は段差・階段を有する戸建て住宅であった.
【評価とリーズニング】
転院時,主治医より発症後2か月以上経過し,大幅な機能回復は見込めないと説明された.身体機能はTh10以下の重度感覚障害,体幹・右下肢MMT2,FBS19/56点,TUG31.84秒であり,方向転換や段差動作に安定性低下を認めた.運動FIMは26/91点で,ADLは移乗が腋窩軽介助,排泄・入浴は全介助であった.また,入院中に夜間排泄時の転倒を認め,実際の生活場面では環境条件も転倒に影響すると考えられたことから,感覚障害に加え生活環境への介入も必要と判断した.そのため,視覚代償や上肢支持を活用した動作戦略の獲得に加え,環境調整を行う方針とした.
【介入内容と結果】
感覚障害に対する感覚再教育を図るとともに,CKC運動や協調性練習を実施した.また,本人・家族ともに自宅退院希望が強く,大幅な身体機能改善は見込めないと予測されたため,早期に家屋評価を行い,自宅環境に合わせた動作練習が必要と考えた.そこで,屋内4点杖歩行を獲得した段階で1回目の家屋評価を実施した.その結果,自宅では玄関や螺旋階段に手すりがなく,調理や移動時は支持物が必要だった.さらに,入浴動作は全介助であり,転倒リスクが高かった.これらの課題に対し,家屋環境を再現した段差・階段昇降練習と電子レンジ使用後の食器運搬動作について,お盆を用いた練習を反復した.その後,自宅内動作の安定性確認のため2回目の家屋評価を実施し,玄関および螺旋階段への手すり設置等,家屋環境および社会資源の調整を行った.最終評価では,感覚障害の軽度改善に伴い,FBS49/56点,TUG13.34秒,運動FIM69/91点まで改善した.ADLは排泄・更衣が自立し,屋内は伝い歩き,屋外は歩行器歩行で自立し,自宅復帰に至った.
【考察】
本症例では,重度感覚障害による立位バランス低下に対し,上肢支持と視覚代償を活用した動作戦略の獲得など機能障害への介入に加え,2回の家屋評価を実施した.1回目の家屋評価で抽出した課題に対し,住宅環境を再現した動作練習を行い,2回目の家屋評価で動作の再現性を確認した上で,手すり設置や介護サービス導入などの環境調整を行った.その結果,感覚障害が残存する中でも,能力向上と環境調整の双方により実用的自立を獲得し,自宅復帰に至ったと考えられた.
【倫理的配慮,説明と同意】
倫理的配慮を十分に行い,患者に口頭および書面で説明し,同意を得た.