講演情報

[KP_17]座位姿勢が左肩甲帯の運動に影響し、左上肢の左前方挙上動作の安定性低下を認めた右脳出血後の一症例

*富長 陸1,2、楠 貴光1,2、鈴木 俊明1,3 (1. 関西医療大学大学院保健医療学研究科、2. 園部病院リハビリテーション部、3. 関西医療大学)

キーワード:

脳出血後、上肢挙上動作、大殿筋の筋緊張低下

【症例紹介】
 症例は、2年前に右脳出血を発症した50歳代前半の男性で左片麻痺を呈している。主訴は「左手を何度かまっすぐ挙げると挙げにくくなる」であり、座位での左上肢の左前方挙上動作時では、動作を反復すると挙上角度が減少し、一貫した角度までの動作の繰り返しが困難となっていた。日常生活では、洗髪動作で連続した左上肢の運動が困難となっており、左上肢の左前方挙上動作の安定性向上をニードとした。
【評価とリーズニング】
 理学療法評価時の座位姿勢は、左股関節屈曲が不十分で骨盤後傾・左回旋を呈し、それに伴う胸腰部右回旋位で胸郭右回旋位を認めた。この姿勢から左上肢の左前方挙上動作を開始すると、左肩関節屈曲、外転に伴い、左肩甲帯伸展し、左肩甲骨外転、上方回旋は生じず、左肩甲上腕関節屈曲約130°まで挙上するが、繰り返すことで角度が減少し、動作に一貫性を認めなかった。この原因として、左股関節屈曲が不十分で骨盤左回旋であることが背景にあると考え、静止時筋緊張検査を実施したところ、左大殿筋下部線維の筋緊張低下を認めた。また、この骨盤左回旋位に対する姿勢保持の代償として、胸腰部右回旋位により胸郭右回旋位が生じ、長期経過のなかで二次的に右最長筋、右腸肋筋の筋緊張亢進を招いたと推論し、静止時筋緊張検査を実施したところ、右最長筋、右腸肋筋の筋緊張亢進を認めた。この座位姿勢から、左上肢の左前方挙上にて左肩甲上腕関節屈曲に外転を伴い、加えて左肩甲帯伸展することで、左肩甲骨外転、上方回旋が生じないため、左肩甲上腕関節の大きな屈曲で左三角筋が過度に活動し、動作を繰り返すことで左肩甲上腕関節屈曲角度が減少し、動作に一貫性を認めなかったと考えた。
【理学療法と結果】
 理学療法では、左大殿筋下部線維の筋緊張の促通、右最長筋と右腸肋筋のストレッチングにより筋緊張の抑制を図り、筋緊張の改善を認めた。座位では左股関節屈曲角度の減少に伴う骨盤左回旋位の改善とともに胸腰部右回旋位に伴う胸郭右回旋位が改善した。さらに、左上肢の左前方挙上動作でも左肩甲帯伸展が生じず、左肩甲上腕関節屈曲、外転とともに左肩甲骨外転、上方回旋することで、動作を繰り返した際にも一貫した角度までの挙上が可能になり、安定性が向上した。
【考察】
 本症例には、左大殿筋の筋緊張低下により左股関節屈曲が不十分で骨盤は後傾・左回旋位であることに対し胸郭右回旋位で右を向いた座位姿勢に着目して改善する必要があったと考える。胸郭右回旋位の改善により、左肩甲上腕関節屈曲、外転とともに左上肢を左前方に挙上するための左肩甲帯伸展が改善し、左肩甲骨外転、上方回旋が生じ、左三角筋の過度な筋活動が軽減することで、繰り返しの左上肢の左前方挙上動作が安定して可能になったと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
 症例に発表の趣旨を説明し、同意を得た。個人情報の保護に十分配慮した。