講演情報

[KP_20]長下肢装具歩行における介助方法の違いと移乗動作の変化―重度片麻痺例における介助歩行の変更を通して―

*大西 洋尭1、中西 康二1 (1. 京丹後市立弥栄病院)

キーワード:

長下肢装具歩行、介助方法、重度片麻痺

【症例紹介】
脳卒中重度片麻痺例では,体幹機能が移乗をはじめとするADLや移動能力の予後に関与する。長下肢装具(KAFO)歩行は麻痺側への荷重と下肢筋活動の賦活を促す一方,上肢支持下の歩行では下肢筋活動が全般に低下することが知られる。すなわち歩行練習における介助方法の違いは,下肢・体幹への課題量を左右する可能性がある。今回,KAFO歩行を平行棒内歩行から後方介助歩行へ変更し,その後の短期間で移乗の介助量が軽減した一例を経験したため,介助方法の違いに着目して報告する。
【評価とリーズニング】
対象は80歳代女性。橋梗塞による右重度片麻痺を呈し,発症後1〜2か月を観察期間とした。初期は基本動作・移乗とも最大介助,Brunnstrom Recovery Stage(BRS)Ⅰ,移乗はFIM 2点であった。KAFOを用いた歩行練習を中心とし,当初は平行棒内歩行を実施した。発症約1か月の時点で,CPG(central pattern generator)や足底反射を介した麻痺側下肢の筋活動賦活を主目的とし,上肢支持により課題が分散することを避けるため,平行棒を中止し療法士による後方介助歩行へ変更した。変更前後で移乗の介助量を比較し,変更後13日間の経過を観察した。
【介入内容と結果】
平行棒内歩行が中心であった時期は移乗のFIMは2点で,介助量に明らかな変化はみられなかった。後方介助歩行へ変更後,13日間で移乗は軽介助へと改善し,静止立位は保持不可から1分間の保持が可能となった。この間,麻痺の程度(BRS)に著変はなかった。
【考察】
本症例では,麻痺の程度(BRS)が不変のまま,後方介助歩行への変更後13日間で移乗介助量の軽減と静止立位保持の改善が得られた。ただし単一事例の前後比較であり,因果関係を示すものではない。発症早期の重度片麻痺では,平行棒など上肢支持下の歩行は下肢筋活動を低下させ,荷重や足底・関節からの求心性入力を介した反射性の筋活動誘発を減弱させうる。この時期に上肢支持を用いると麻痺側下肢への課題が分散し,CPGや荷重・足底受容器を介した反射を十分に駆動できない可能性がある。平行棒歩行が中心であった時期に移乗介助量が不変であったことは,この弊害を反映したと考えられる。一方,後方介助による装具歩行では膝の支持性が確保された状態で麻痺側への荷重と股関節伸展が反復され,課題を下肢へ集約することで反射を生かした筋活動の賦活が期待できる。以上より,重度片麻痺の歩行再建では,麻痺の初期には後方介助による反射を生かした動作練習を優先し,静止立位保持が可能となるレベルに達した段階で自発的な歩行練習へ移行することが望ましいという仮説を提示する。本症例は仮説生成的な報告であり,今後の検証を要する。
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告に際し対象者の同意を得た。