講演情報
[I-OR03-03]複雑先天性心疾患の手術術式の決定を支援する心臓シミュレータ “ped UT-Heart” の開発(第4報):性能試験結果及び治験プロトコル
○白石 公1, 黒嵜 健一1, 盤井 成光2, 帆足 孝也3, 坂本 喜三郎4, 小田 晋一郎5, 笠原 真悟6, 新川 武史7, 平田 康隆8, 芳村 直樹9, 久田 俊明10 (1.国立循環器病研究センター 小児循環器内科, 2.国立循環器病研究センター 小児心臓外科, 3.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓血管外科, 4.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 5.京都府立医科大学 心臓血管外科, 6.岡山大学病院 心臓血管外科, 7.東京女子医科大学 心臓血管外科, 8.国立成育医療研究センター 心臓血管外科, 9.富山大学医学部 心臓血管外科, 10.東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
キーワード:
シミュレーション、複雑先天性心疾患、外科手術
複雑先天性心疾患(CHD)の手術には、患者の心臓の解剖学的構造を正確に理解するとともに、考えられる複数の手術術式において、各々の手術後の心機能の的確な予測と比較が重要である。我々は東京大学で開発された心臓シミュレータ“UT-Heart”を基盤とし、患者の有限要素心臓モデルを用いて、複雑CHDの血行動態、壁運動、弁の動き、酸素飽和度、電気生理学をシミュレートすることにより複数の術式の術後の血行動態を比較検討できる“ped UT-Heart”システムを開発した。これまでに複雑CHD16例を対象とした前向き臨床試験(jRCTs052210139)を実施し、12例で実際に外科手術が実施され、術者の術後における有用性評価では主要評価項目を満たした(昨年報告)。2024年にはPMDAプロトコル相談(性能および治験)を各々終了し、2024年8月にPMDAに治験届を提出し、30日調査期間も終えてプロトコル固定の段階に至っている。治験は複雑先天性心疾患20症例(15歳未満)に対して、単群、前向き、介入、非盲検、多施設(全国5施設)、で実施する。主要評価項目は、前述の臨床試験と同様に、術者の術後における5段階有用性評価のessentialとvery usefulの割合において、95%信頼区間の最小値が30%以上と設定する。これまでに実施した手術前および手術後(術前パラメータを入力)のシミュレーション値の評価に対する後ろ向き研究では、シミュレーション結果(Pp/Ps, Qp/Qs, RVEDV/LVEDV, SaO2)は、術前術後ともに臨床所見(心臓カテーテル所見)と良好に近似(0.84≦r≦0.95, ±20%以内)した。今後は治験を迅速に進めて、管理医療機器の承認を目指す予定である。 (“ped UT-Heart”は、東京大学大学院新領域創成科学研究科、ジャパンメディカルデバイス社、Q‘sfix社、UT-Heart研究所、クロスメディカル社との共同開発による。)