講演情報

[I-OR04-01]未手術ファロー四徴症に対するバルーン肺動脈弁形成術の有効性と安全性に関する検討

大森 紹玄, 中村 祐輔, 築野 一馬, 増田 詩央, 百木 恒太, 真船 亮, 河内 貞貴, 星野 健司 (埼玉県立小児医療センター 循環器科)
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キーワード:

バルーン肺動脈弁形成術、ファロー四徴症、カテーテル治療

【背景】未手術ファロー四徴症(uTOF)に対するバルーン肺動脈弁形成術(BPV)の有効性・安全性の報告は限定的である. 当院では一部のuTOF例にBPVを実施してきた. 目的は(1)症候性チアノーゼの改善 (2)治療後の肺動脈弁輪径の成長促進 である. 【方法】TOF-BPVの安全性および上記2目的に関する有効性を検証するため, 当院で2013年1月~2025年1月の間にBPVを実施したuTOF例の診療録を後方視的に検討した. BPVは全身麻酔・十分な酸素吸入下で行った. 右室造影で肺動脈弁輪径を計測し, 4Fr JRカテーテルと0.035” Radifocusワイヤ等で弁を通過し, 5-8mm径のバルーンで弁を拡大した. 目的(2)の効果検討のため, 同期間にBPV後に他の姑息術なしで心内修復術(ICR)に到達した症例(BPV群)と, 一切の姑息術なしでICRに到達した症例(対照群)の, 出生時・ICR直前のエコーでの肺動脈弁輪径の対正常径比(%N値)を比較した. 【結果】12例にTOF-BPVを実施. 目的は(1)が7例, (2)が5例だった. BPV時日齢は中央値21(Q1-Q3 15-40), 体重は3.4(3.0-3.9) kg, 造影での肺動脈弁輪径は5.4(4.6-5.9) mm, 弁輪径%N値は65(63-71) %, 使用バルーン径 7mm, バルーン/弁輪径(B/A)比 1.30(1.20-1.38), 術前PGE製剤使用は8/12例だった. SpO2中央値は5%幅の帯域に区切ると治療前80-84%, 治療後90-94%だった. 有害事象: 治療関連の無酸素発作はなかった. 治療後PRは11例でmild以下, 1例はmoderateとなり(B/A比 1.51), 後に末梢肺動脈拡大による気管軟化・窒息様発作からICR後のNPPVを要した. 目的(2)の効果検討: TOF-BPV群(n=4)と対照群(n=35)の肺動脈弁輪径%N値は, 出生時70.8±4.3 vs 69.5±9.4 (p=0.79), ICR前84.5±10.8 vs 75.1±10.3 (p=0.095)だった. ICR時に自己肺動脈弁が温存されたのは3/4例 vs 22/35例だった(有意差なし). 【結論】TOF-BPVは安全に施行可能であり+10%程度のSpO2上昇が期待できる. BPV後に肺動脈弁輪の成長が促進される可能性がある.