講演情報

[I-OR05-02]我が国の小児特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)患者の治療の現状

細川 奨1,2, 石井 卓2, 永井 礼子3, 内田 敬子4, 石田 秀和5, 高月 晋一6, 小垣 滋豊7, 山岸 敬幸8, 土井 庄三郎2,9 (1.武蔵野赤十字病院 小児科, 2.東京科学大学 医学部 小児科, 3.北海道大学 医学部 小児科, 4.東京医科大学 細胞生理学, 5.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学, 6.東邦大学医療センター大森病院小児科, 7.大阪急性期・総合医療センター小児科, 8.東京都立小児総合医療センター, 9.東京医療保健大学立川看護学部)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

小児、IPAH/HPAH、JAPHR

【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)は予後不良の難治性疾患であるが、特異的治療薬の進歩により予後は改善しつつある。しかし、日本における小児特発性・遺伝性PAH(IPAH/HPAH)患者の治療実態は十分に検討されていない。【目的・方法】本研究では、日本肺高血圧症レジストリ(JAPHR)に登録された18歳未満(以下、小児群)の症例を対象にデータを収集・解析し、小児PAHの治療実態を明らかにすることを目的とした。【結果】日本小児循環器学会では、2023年度まで毎年約30例の新規小児PAH患者が報告されており、このうちJAPHRには6施設から27例(新規発症例13例、既存症例14例)が登録されている。診断時年齢の中央値は9歳(4~14歳)、診断からの治療期間中央値は8.2年(0.7~16.4年)であった。診断契機は失神(8例)、右心不全徴候(8例)、学校心臓検診(7例)が主であった。小児群の新規発症例(n=13)の診断時データをJAPHR成人群(n=108)と比較すると、平均肺動脈圧(59.8±21.2 vs. 46.9±14.4 mmHg, p=0.003)、肺血管抵抗係数(19.5±9.0 vs. 13.8±9.2 Wood単位・m2, p=0.03)がともに小児群で有意に高かった。また、治療選択の比較では、小児群でより積極的な治療が行われていた。(1)新規発症例の初期併用療法の導入率: 小児群 75% vs. 成人群 31%(p=0.008)(2)全体コホート(小児: 27例、成人: 189例)における治療状況 2剤または3剤併用療法の導入率: 小児群 96% vs. 成人群 24%(p<0.0001)、初期併用療法の導入率: 小児群 51% vs. 成人群 18%(p=0.0001)、プロスタサイクリン(PGI2)静注または皮下注の導入率: 小児群 55% vs. 成人群 24%(p=0.0008)【結論】JAPHRに登録された小児IPAH/HPAH症例は、成人群と比較して診断時の重症度が高く、より積極的な治療が行われていた。さらなる症例の蓄積が必要であり、今後も各施設の協力による新規症例の登録とデータ収集が重要である。