講演情報
[I-OR07-06]小児先天性心疾患患者における心肺機能低下のスクリーニングとしての筋指標の有用性
○野崎 良寛1,2, 西川 浩子3, 川松 直人4, 高橋 朋枝3, 俣木 優輝3, 渡慶次 香代3, 林 知洸2, 矢野 悠介2, 石踊 巧2, 村上 卓1,2, 高田 英俊1,2 (1.筑波大学 医学医療系 小児科, 2.筑波大学附属病院 小児科, 3.筑波大学附属病院 リハビリテーション科, 4.筑波大学附属病院 循環器内科)
キーワード:
心肺運動負荷試験、体組成、握力
【はじめに】先天性心疾患(CHD)患者は、運動耐容能の低下があっても自覚していないことが多く、心肺運動負荷試験(CPX)によって客観的に潜在的な運動耐容能低下を検出することは重要である。しかし、CPXは特殊な装置を要し年齢によっては適切に評価することは難しい。CPXでは運動中の全身の筋肉で消費・産生される酸素・二酸化炭素への心肺の適応能力を評価するため全身の筋肉の状態に影響を受けるとされ、成人では筋指標とCPX指標の関連が報告されている。【目的】小児CHD患者におけるCPX指標と筋指標との関連を検討する。【方法】当院通院中のCHD患者のうちCPXが施行され、その1年以内に電気インピーダス体組成計検査、および握力測定を行った患者を後方視的に調査し、各指標は既報の健常者データよりZ-score化した。加えてCPXと筋指標についてPearsonの相関係数を検討し、P<0.05を有意とした。【結果】対象は28名(女性10名, フォンタン術後患者14名)でCPX時年齢14.5±1.7歳。Peak VO2 1,324±368mL/min(Z -2.64±1.60)、嫌気代謝閾値(AT) 816±273mL/min (Z -2.85±1.67)、 骨格筋量指数(SMI, 四肢骨格筋重量/身長2) 5.83±0.94kg/m2 (Z -0.99±1.29)、握力25.9±8.1kg(Z -0.85±1.07)と、心肺機能は低く、筋量・筋力も乏しかった。SMIとPeak VO2 (r=0.597), AT (r= 0.546), また、握力とPeak VO2 (r=0.46), AT (r= 0.397)といずれも有意な相関を示した。Peak VO2 Z score<-3.0の予測式を設定するとSMI Z-scoreではcut off -1.488でAUC 0.738(特異度 82%, 感度 64%), 握力 Z-scoreではcut off -1.845でAUC 0.695(特異度 100%, 感度 46%)であった。【考察とまとめ】少ない症例数の検討ではあるが、心肺機能と筋量・筋力は有意な相関を認めた。小児においても体組成評価や握力測定は、年齢に加えて性別を考慮に入れた判定法が確立すれば心肺機能低下のスクリーニングに活用できる可能性がある。