講演情報
[I-P03-2-03]ウイルス感染症が川崎病発生数に与える影響:COVID-19パンデミック期間における川崎病発生数に関する分割時系列分析
○石井 卓1, 山口 洋平1, 櫻井 牧人1, 下山 輝義1, 細川 奨2 (1.東京科学大学 小児科, 2.武蔵野赤十字病院 小児科)
キーワード:
川崎病、COVID-19パンデミック、分割時系列分析
【背景と目的】COVID-19パンデミックの期間では、COVID-19以外の流行性ウイルス性疾患の発生が大きく減少した。本研究では、この状況を自然実験として利用し、COVID-19パンデミックの期間における川崎病 (KD) の発生率の変化が年齢、地域によって異なるか、また特定の感染症がKDの発症を媒介するかを検討した。【方法】毎月のKD症例数と患者情報をDPCデータベースから抽出し、分割時系列分析によりCOVID-19パンデミック開始前後でのKD患者数の変化を年齢・地域ごとに検討した。また、流行性ウイルス感染症の月あたりの定点発生数を用いて、各ウイルス感染症がKDの発生に寄与しているかを媒介分析で検討した。【結果】日本でCOVID-19に対する初回の緊急事態宣言が発出されたのを境に、生後6か月から4歳の人口10万人あたりのKD患者数の減少がみられた(immediate change -21%, 95%信頼区間 -36%, -4%)。また、5~15歳の患者でも減少が確認された(immediate change -31%, 95%信頼区間 -36%, -2%)。しかし、生後6か月未満の患者では有意な変化は認めなかった。地域別にみると、KD患者数は、北海道、中部、近畿、中国・四国では有意に減少し、関東では有意ではないものの減少していたのに対し、九州では有意な減少が見られなかった(immediate change -2%, 95%信頼区間 -19%, +19%)。COVID-19パンデミック前後の各ウイルス感染症数を元に媒介分析を行うと、咽頭結膜熱がKDを媒介している結果となった(Proportion mediated 51.2%)。【結論】ウイルス感染症がKD発生に関わっていることが示唆される結果だったが、同時に乳児期早期では関与が少ない可能性が示された。また、ウイルス感染症のKDへの関与は地域によって異なる可能性が示唆された。ウイルス感染症の中ではアデノウイルス感染症がKDの発症と密接に関連していることが示唆された。