講演情報
[I-PSY2-5]小児における先天性心疾患を伴う肺高血圧症例の短期予後:JACPHR登録症例の検討
○石井 卓1, 内田 敬子2, 細川 奨3, 石田 秀和4, 高月 晋一5, 住友 直文6, 稲井 慶7, 福島 裕之8, 小垣 滋豊9, 山岸 敬幸10, 土井 庄三郎1 (1.東京科学大学 小児科, 2.東京医科大学 細胞生理学, 3.武蔵野赤十字病院 小児科, 4.大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学, 5.東邦大学医療センター大森病院 小児科, 6.慶應義塾大学医学部小児科, 7.東京女子医科大学 循環器小児科・成人先天性心疾患科, 8.東京歯科大学市川総合病院小児科, 9.大阪急性期・総合医療センター小児科・新生児科, 10.東京都立小児総合医療センター)
キーワード:
肺高血圧、先天性心疾患、レジストリ研究
【背景】先天性心疾患を伴う肺高血圧症(CHD-PH)に関する小児例の報告は少なく、予後についても不明な点が多い。【方法】2024年12月までに本邦のCHD-PH多施設症例登録研究(JACPHR)に登録された447例のうち、Fontan循環症例を除く16歳未満の症例かつ1回以上フォローアップ登録がある症例について、短期の生存率と心血管イベント回避率の検討を行った。【結果】対象128例の男女比に差はなく、登録時年齢の中央値は7.2歳(0.7~15.9歳)、染色体異常などの併存疾患を有する症例は87例(68.0%)、21トリソミーは49例(38.3%)であった。基礎心疾患ではpost-tricuspid shuntが55例(43.0%)と多く、肺高血圧症の臨床分類では修復術後の症例が多かった(48例、39.7%)。登録時の平均肺動脈圧(mPAP)の中央値は25mmHg(13~72)、肺血管抵抗係数の中央値は4.0WU・m2(0.8~17.9)であった。登録時の肺高血圧標的治療については、薬物治療なし46例(35.9%)、単剤治療37例(28.9%)、併用療法45例(35.2%)であった。生存率は1年時、2年時とも97.9%、心血管イベント回避率は1年時96.8%、2年時94.3%であった。Log-rank検定により、イベント発生曲線を比較した結果、高肺血管抵抗係数(>6WU・m2)、高平均肺動脈圧(≧40mmHg)、診断時年齢5歳以上、高BNP(≧50pg/ml)の群で心血管イベント回避率が有意に低かった。また、Cox比例ハザード回帰分析で、診断時年齢5歳以上、併存疾患あり、投薬なし、登録時mPAP40mmHg以上、登録時BNP50pg/ml以上を共変量として調整したところ、診断時年齢(ハザード比 8.0、p=0.025)と登録時mPAP(ハザード比 17.4、p=0.008)が統計的に有意なリスク因子であった。【結論】小児CHD-PHにおいても高いmPAPは短期の心血管イベント発生の有意なリスク因子であることが明らかになった。長期予後については引き続き検討を行う必要がある。