講演情報
[II-JS-5]フォンタン患者におけるIVC径/BSA比の経時的変化とFALD予測マーカーとしての可能性
○岡本 健吾, 中川 直美, 片岡 功一, 福嶋 遥佑, 大西 佑治, 守家 将平, 鎌田 政博 (広島市立広島市民病院 循環器小児科)
キーワード:
FALD、フォンタン、腹部エコー
【背景】高いCVPはフォンタン関連肝疾患(FALD)発症リスク,肝線化マーカー(APRI, Fib-4)の上昇は死亡リスクとされる.一般に CVPの推定にはIVC径が有用とされるが,フォンタン患者における報告は少ない.【目的】当院のフォンタン患者のFALDの実態と,IVC径/BSA比をはじめとした各種マーカーの推移を調査し, IVC径/BSA比がFALDの発症予測に有用か検討する.【対象】当院で2020年以降に腹部エコー検査歴があるフォンタン患者90名.男女比47:43.診断Heterotaxy25,HLHS12,TA10,DORV10,single ventricle8,PA/IVS7,ccTGA6,cTGA4,MA3,AVSD2,PA/VSD2,Other1.最終フォロー時年齢8.8~47.5(中央値18.2).フォンタン術施行年齢1.5~19.0(2.7).術後フォロー年数1.4-39.7(14.3)【方法】2020年以前のものも含む心臓カテーテル検査,腹部エコー検査,および,同時期の肝線維化マーカーや心エコー検査所見を診療録より後方視的に収集.FALDの有病率,累積罹患率,およびIVC径/BSA比等の経時的変化を観察.また初回腹部エコー施行時で非FALD群(n=48),FALD群(n=42)の群分けを行い, FALD発症のリスク因子について検討した.【結果】FALD,肝細胞癌の有病率はそれぞれ78%,2%で,FALDの累積罹患率はフォンタン術後5年,10年,20年でそれぞれ3.4%,36.0%,80.2%だった.フォンタン患者では経時的にFib-4(0.51→0.85),CVP(12.1→13.5mmHg)が上昇し,IVC径/BSA(13.9→12.3mm/m2)が減少していた.Cox比例ハザード回帰を用いた解析においてCVP(HR1.16),Fib-4(HR0.26),IVC径/BSA比(HR1.23)はFALD発症の独立したリスク因子だった.【考察】フォンタン患者では経時的にFib-4が上昇しており,経年的に肝線維化が進行することを示していると考えられる.IVC径/BSA比が大きいことがFALD発症のリスクと考えられる一方で,IVC径/BSA比はフォンタン患者で経時的に減少する傾向がある.IVC径/BSA比の大小のみでなく,経時的な減少から肝リモデリングの進行を疑うことが重要な可能性がある.