講演情報
[II-OR20-04]当院における肺静脈狭窄の治療戦略 - Upgrade Stenting Strategyとシロリムス-
○山岡 大志郎, 斎藤 真理子, 矢内 俊, 清水 武, 喜瀬 広亮, 藤井 隆成, 富田 英, 堀川 優衣, 堀尾 直裕, 宮原 義典 (昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)
キーワード:
pulmonary venous obstruction、Sirolimus、Total anomalous pulmonary venous connection
背景:当院では肺静脈狭窄(PVO)に対しUpgrade Stenting Strategy(USS)(難治性ステント再狭窄に対する「外科的ステント除去+サイズアップしたステントの再留置」)を行い,これらが無効な症例に対して,近年mTOR阻害を介して狭窄の進行予防が報告されているシロリムスを院内IRBの認可のもと2023年11月から導入している.目的:USS及びシロリムスの効果を評価する.方法:2019年以降に当院でUSSを行った患者を対象とした.診療録を用いて,治療経過,使用したステント,ステント内狭窄率(100×最小径/同部位ステント径),最小径変化率(100×最小径/前回カテーテルの最小径(治療介入ありなら治療後径))に関して検討を行った.結果:対象患者は3例で,うち2例はシロリムスを導入した.TAPVC repairは日齢9-35,初回PVO releaseは生後1-2ヶ月に行われた.初回ステント留置は生後3ヶ月-1歳3ヶ月でステント径は4-8mmであった.初回ステント留置後からUSまで計5-11回 (1.9-4.3回/年)PTAが施行された.3-6歳でUS(ステント径7-10mm)を行い,以降PTAの頻度は2-5回(0.7-1.2回/年)と減少していた.US後に1例は高度再狭窄、肺出血のため7歳で再度外科的ステント除去+ステント留置を施行しシロリムスを導入,また高度狭窄を繰り返す1例にもシロリムスを導入した.シロリムス導入後半年の時点でのフォローアップでは,1例は狭窄率60-83%で治療介入を要さず1年3ヶ月無治療で経過した.もう1例は狭窄率が37-55%であったが,最小径変化率は77-97%とシロリムス導入前の45-86%と比較して内径が維持できておりPTAを追加し以降半年は無治療で経過した.シロリムスの血中濃度は2例とも至適範囲内でコントロールされ,副作用はなく経過している.結論:USSとシロリムス全身投与を併用することで,PVO発症後,8年経過後も全例で生存が得られている.治療効果の評価に関してはさらなるフォローアップ期間と症例数が必要であるが,本法は肺静脈狭窄の予後改善に有用な治療選択肢となり得る.