講演情報

[II-OR20-06]肺静脈狭窄症における内膜肥厚の細胞外マトリックス・トランスクリプトーム解析

中山 俊宏1,2, 内田 敬子1, 内藤 祐次1, 古田 智子1, 石道 基典3,4, 岩淵 英人5, 猪飼 秋夫6, 松永 浩子7,8, 竹山 春子7,8,9,10, 坂本 喜三郎3, 横山 詩子1 (1.東京医科大学 細胞生理学分野, 2.東京医科大学 小児科・思春期科学分野, 3.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 4.沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 小児心臓血管外科, 5.静岡県立こども病院 病理診断科, 6.静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター 肺循環動態研究部, 7.早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構, 8.産総研・早大 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ, 9.早稲田大学大学院 先進理工学研究科, 10.早稲田大学 先進生命動態研究所)
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キーワード:

肺静脈狭窄症、内膜肥厚、細胞外マトリックス

【背景】肺静脈狭窄症(PVS)は肺静脈の内膜肥厚により狭窄・閉塞する希少難病である.既存の病理学的検討は少数例報告に限られ,いまだ病態形成機序は解明されていない.
【目的】PVSの内膜肥厚メカニズムを病理組織およびトランスクリプトミクスから検討する.
【方法と結果】静岡県立こども病院にてPVSに対し外科的修復術を施行した14症例(2014年4月~2024年1月)の病理肺静脈組織を解析した.Masson Trichrome(MT)染色 ,Alcian Blue(AB)染色,Elastica Masson Goldner染色,ヒアルロン酸結合タンパク染色,免疫染色(増殖細胞核抗原(PCNA),プロスタグランジンE受容体EP4,Cleaved Versican,ADAMTS5)を行い,発現量をImageJで定量しMann-Whitney検定を行った.PVS組織をMT染色とPCNA染色によりPCNA陽性細胞比30%以上の細胞性増殖が亢進している細胞増殖領域と,弾性線維形成が高度かつPCNA陽性細胞比10%以下の非細胞増殖領域に分類した.AB染色では両領域にグリコサミノグリカンが高発現していた.ヒアルロン酸とEP4は細胞増殖領域に高発現し(1.5±0.2倍,3.3±1.4倍,p<0.05),Cleaved VersicanとADAMTS5は非細胞増殖領域に高発現していた(1.3±0.2倍,1.4±0.2倍,p<0.05).さらに,二領域についてRNA抽出が可能な8症例について微小空間トランスクリプトーム解析を行ったところ,先天性発症群と術後発症群での比較において先天性発症群の細胞増殖領域で長鎖非コードRNAであるNEAT1(Nuclear Enriched Abundant Transcript 1)が有意に増加していた.
【結語】ヒアルロン酸とEP4は内膜肥厚形成における細胞増殖に関与し,切断酵素ADAMTS5と切断されたVersican fragmentはPVS内膜肥厚の陳旧化に関与する可能性が示唆された.微小空間トランスクリプトーム解析によりPVS内膜肥厚形成に関与しうる発現変動遺伝子を同定した.