講演情報

[II-OR21-01]川崎病モデルマウスにおける冠動脈炎発症メカニズムの検討

藤田 聖実1,2, 里岡 大樹2, 星野 真介1, 平田 多佳子2 (1.滋賀医科大学小児科学講座, 2.滋賀医科大学生命科学講座生物学)
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キーワード:

川崎病、モデルマウス、NK細胞

【目的】近年、川崎病に対する自然免疫系の関与が注目されている。本研究では、パターン認識受容体NOD1のリガンドであるFK565をマウスに投与することにより川崎病様の冠動脈炎を引き起こすモデル(NOD-1リガンドモデル)を用いて浸潤細胞の解析を行った。【方法・結果】NOD-1リガンドモデルの冠動脈を含む大動脈基部のマイクロアレイ解析を行ったところ、未処置マウスと比較して細胞傷害に関わる遺伝子の発現が亢進していたことから、冠動脈炎発症にはCD8 T細胞あるいはNK細胞が関与していることが考えられた。そこでまず、T細胞およびB細胞を欠損するRag2欠損マウスにFK565を投与したところ、冠動脈炎を発症した。また、NOD-1リガンドモデルの冠動脈周囲のフローサイトメトリー解析では、浸潤NK細胞数が増加していた。以上より、冠動脈炎発症にはCD8 T細胞ではなくNK細胞の関与が大きいと考えられた。そこで、抗アシアロGM1抗体の投与によりNK細胞を除去したマウスにFK565投与を行ったところ、冠動脈炎の発症が抑制された。次に、NOD-1リガンドモデルと未処置マウスのシングルセルRNAシーケンスの比較により、NOD-1リガンド投与によってNK細胞の遺伝子発現が変化すること、NOD-1リガンドモデルの冠動脈周囲に浸潤するNK細胞はケモカインレセプターCX3CR1を発現しており、細胞傷害性が高いことなどを見出した。【結論・考察】NOD-1リガンドモデルでは、NK細胞がCX3CR1を発現して冠動脈周囲に浸潤し、冠動脈炎の発症に関与すると考えられた。