講演情報
[II-OR21-02]細胞外小胞内microRNAバイオマーカーによる難治性川崎病の早期診断法の開発 - 重篤な後遺症である川崎病冠動脈瘤の発症予防に対する治療戦略 -
○仲岡 英幸1, 原 朱音2, 坪井 香緒里1, 岡部 真子1, 伊吹 圭二郎1, 小澤 綾佳1, 廣野 恵一1 (1.富山大学 医学部 小児科, 2.富山大学 薬学部 医薬品品質保証・評価学講座)
キーワード:
難治性川崎病早期診断法、microRNAバイオマーカー、細胞外小胞(EVs)
背景: 細胞外小胞(EVs)が多くの疾患病態に関与し、特にmicroRNAを介した細胞間コミュニケーションが免疫応答を調整する。本研究では、EVs内のmicroRNAをバイオマーカーとしてIVIG治療前にIVIG不応群を高精度に予測する新規診断法の開発を目指した。目的: 急性期川崎病患者の血清中EVs内のmicroRNAプロファイルを解析し、IVIG不応群を識別するバイオマーカーを同定し、迅速診断システムを構築することで、治療戦略の最適化と冠動脈瘤の発症予防を図る。方法: 川崎病患者50例(難治例13例を含む)と非川崎病発熱患者25例の血清から高速遠心法によりEVsを分離精製した。マイクロアレイにて2578種類のmicroRNA発現量を測定し、データの可視化と特徴量抽出のために次元削減解析(PLS-DA)および機械学習手法の一つであるランダムフォレスト解析を組み合わせ、不応群を高精度に予測可能なバイオマーカーセットを構築し、このバイオマーカーを用いたスコアリングシステムの診断精度を検証した。結果: EVs内のmicroRNA発現プロファイルにより、IVIG治療反応群、不応群、非川崎病患者の3群を明確に分類できた。さらに、特定したバイオマーカーを用いたスコアリングシステムで、cut-off値=-1.01以下と設定した場合、富山大データセットにおいて感度100%、特異度100%でIVIG治療前に不応群を予測できた。考察: EVs内microRNA発現プロファイルがIVIG不応群の病態に密接に関連し、IVIG治療前に高精度な予測が可能であることを示した。この診断法により、「治療効果を見て次の治療を選択する」従来のアプローチから「診断に基づく迅速な治療選択」へと転換が可能となり、診療の質の向上が期待される。結論: EVs内のmicroRNAバイオマーカーによるIVIG治療前から不応群を高精度に予測する新規診断法を確立できた。この迅速診断システムを活用することで、難治性川崎病の早期診断と適切な治療介入が可能となり、冠動脈瘤の発症予防に貢献する。