講演情報

[II-OR21-03]長野県巨大冠動脈瘤ゼロプロジェクト(NCALZERO)-県内統一治療プロトコールについて

内海 雅史1, 大日方 春香1, 元木 倫子1, 蜂谷 明2, 瀧聞 浄宏3 (1.信州大学医学附属病院 小児科, 2.北信総合病院 小児科, 3.長野県立こども病院 循環器小児科)
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キーワード:

川崎病、難治性川崎病、冠動脈瘤

【背景】COVID-19の影響で2020年以降川崎病患者数は減少に転じさらに診断率および急性期治療法の改善により巨大冠動脈瘤合併例は減少したが、巨大冠動脈瘤症例は0.10-0.13%で推移している。長野県でも2009年からの10年間で巨大冠動脈瘤合併例が5例発症し、急性心筋梗塞や瘤内血栓などの合併症を発症している。【目的】2019年1月から5年間に長野県内で治療された川崎病患者の巨大冠動脈瘤発症をゼロにするため、県内の関連医療機関において統一の治療プロトコール(長野県巨大冠動脈瘤ゼロプロジェクト;NCALZERO)を実施し、その有効性を検討した。【方法】県内の川崎病冠動脈病変合併例を全て把握すること、全ての治療過程においてステロイドは併用せず、3rd Line以降の治療を要する難治例の治療については信州大学小児科循環器グループがコントロールすることとした。3rd Lineはインフリキシマブ(IFX)を第一選択とし、IFX適応外症例は当院へ転院しシクロスポリン(CsA)、血漿交換(PEx)を実施した。4thLine以降は全例転院し症例の状態に応じてCsA投与、PEx、IVIG追加投与を行った。【結果】最終的に当院で追加治療した症例は25例、冠動脈合併症のため外来紹介された症例は15例であったが、小瘤0.9%(7例)、中等瘤0.5%(4例)、巨大瘤は0であった。いずれの症例も小瘤以下に改善し、抗凝固療法は中止可能であった。統一プロトコール実施前10年に県内で発生した巨大瘤出現率は0.18%(5例/2,806例)で、同時期の全国調査の0.16%(239例/146,219例)と同程度であった。本プロトコール実施期間と同時期に報告された全国調査では小瘤1.4%、中等瘤0.5%、巨大瘤0.13%と報告されており本プロトコールは良好な成績を得た。【考察】治療抵抗性川崎病患者に対する治療プロトコールを明確化し、大学病院が主体となり関連病院との連携を密にすることで追加治療を遅延なく実施しできたことで巨大冠動脈瘤を減らすことができたと考える。