講演情報

[II-OR21-05]植込み型左室補助装置(LVAD)装着を施行した川崎病冠動脈障害による虚血性心筋症の2例

高島 悟1, 津田 悦子1, 遠藤 寛之2, 伊藤 裕貴1, 坂口 平馬1, 黒嵜 健一1, 塚本 泰正3, 福嶌 五月4 (1.国立研究開発法人国立循環器病研究センター 小児循環器科, 2.国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 肺循環科, 3.国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 移植医療部, 4.国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓血管外科部門 心臓外科)
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キーワード:

川崎病、虚血性心筋症、補助人工心臓

川崎病冠動脈障害による冠動脈狭窄や閉塞に伴い、虚血性心筋症に至る症例がある。今回、幼少期に川崎病に罹患し、遠隔期に虚血性心筋症から心臓移植登録が必要となり、植込み型左室補助装置(LVAD)装着を行った2例を経験した。(症例1)35歳男性。3歳で川崎病に罹患し、主要冠動脈3枝に巨大冠動脈瘤を認めた。発症2ヶ月で、左前下行枝(LAD)閉塞による急性心筋梗塞(AMI)を発症し、冠動脈バイパス術(CABG)を施行した。14歳で左回旋枝(LCX)の局所性狭窄に対してロータブレーター(PTCRA)を施行したが、左室駆出率(LVEF)42%と低下した。30歳代頃より、LVEFの更なる低下、非持続性心室頻拍が見られた。33歳で肺高血圧(PH)が疑われ、心臓カテーテル検査を勧めたが、拒否していた。35歳突然心肺停止となり、経皮的心肺補助装置(PCPS)を装着し、LCXに対するPTCRAを施行した。PCPSを離脱したが、LVEF 18%と低下、LVDd 72mm(133%N)と拡大し、カテコラミン離脱困難となった。心臓移植適応と判断し、同年植込み型LVAD装着を施行した。(症例2)17歳男性。4歳で川崎病に罹患し、左右冠動脈に巨大冠動脈瘤を認めた。8歳でLAD閉塞によるAMIとなり、CABG (左内胸動脈-LAD)を施行した。術後に左冠動脈主幹部閉塞によるAMIを再発症し、内科的治療を行うもLVEF 15%と増悪した。循環作動薬が中止困難であり、9歳で心臓移植適応とした。その後、外来で内服薬管理となったが、BNPは300pg/L台であった。しかし、低身長に対する成長ホルモン治療による体格の成長に伴い、14歳ごろからBNPが700pg/L以上となった。16歳にはLVDd 70.8mm(169%N)と拡大、LVEF 25.4%と低下していた。心臓カテーテル検査では、平均肺動脈圧 38mmHgとPHがあり、肺血管抵抗は5.7 Woodと上昇していたため、LVAD装着を施行した。(まとめ)小児期のAMI後、遠隔期に肺高血圧を呈し心臓移植適応となった。移植待機期間が長いため、肺高血圧の出現はLVAD装着の目安となりうる。