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[II-OR23-01]小児大動脈弁疾患に対する弁形成術遠隔期成績の検討

松尾 諭志, 崔 禎浩, 熊江 優 (宮城県立こども病院)
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キーワード:

先天性大動脈弁疾患、弁形成、大動脈弁置換

(背景・目的) 小児大動脈弁疾患に対して、交連切開や交連形成、自己心膜などでの弁尖延長・置換といった弁形成方法が選択される。再弁形成困難例では大動脈弁置換(AVR)やRoss手術が最終的に適応となるが、弁形成のdurabilityが予後を左右する。当院の小児大動脈弁疾患に対する弁形成の成績を検討した。(方法) 2009年1月から2025年1月までに当院で小児大動脈弁疾患に対し、大動脈弁形成術を施行した11例を対象。疾患はAS6例、AR5例。平均観察期間は58.2±51.1ヶ月。弁尖延長・置換での形成は独自のテンプレートに従いグルタルアルデヒド処理した自己心膜を縫着した。(結果) 弁形態はmonocusp2例、bicusp4例、tricusp5例。弁形成の方法は弁尖延長・置換4例、交連切開・粘液組織切除4例、交連形成3例。弁尖延長・作製症例は全例3弁での再建を行った。各弁形成術別の手術時年齢は中央値7.9(5.5-12.1)、0.1(0.1-2.5)、0.3(0.1-7.3)年。再形成症例は3例認め、1例は弁尖延長後のARに対して術後21ヶ月時にcusp plication、2例目は交連切開後のASに対して術後6日目に交連切開を追加、3例目は交連切開後のARに対して術後5日目に自己心膜でのRL側弁尖再建が施行された。初回手術、再形成症例の術後急性期死亡なし。初回手術で弁尖延長、置換した症例全例が術後ARの進行にて初回手術後平均58ヶ月でAVRが施行された。交連切開した症例のうち3例がASとAR増悪にてそれぞれ術後7、11ヶ月後にRoss手術、AS増悪にて術後10年後にAVRが施行された。AVR、Ross手術回避率は5年58%、10年35%だった。遠隔期死亡なし。現在、新生児乳児症例を除いた10例のNYHAは全例I度で経過。交連形成した1例が中等度 ARで経過中である。(結論)先天性大動脈弁疾患に対する弁形成術は、再弁形成困難例でAVR、Ross手術を要するも概ね良好な結果だった。段階的手術を念頭に入れた包括的な弁形成術の構築が遠隔期成績向上の鍵となる。