講演情報

[II-P01-6-01]ショートリード型次世代シーケンスでバリアント検出不能なマルファン症候群~遺伝学的診断のための次手を考える~

山本 英範1, 西尾 洋介2,3, 佐藤 純4, 鈴木 謙太郎1, 森本 美仁1, 郷 清貴1, 深澤 佳絵1, 大橋 直樹1, 加藤 太一1 (1.名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター 小児科, 2.名古屋大学 環境医学研究所 発生遺伝分野, 3.名古屋大学医学部附属病院 ゲノム医療センター, 4.JCHO中京病院 中京こどもハートセンター 小児循環器科)
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キーワード:

マルファン症候群、遺伝学的検査、次世代シーケンス

【緒言】マルファン症候群(MS)はFBN1機能喪失に由来する遺伝性疾患である。診断基準には、表現型(大動脈拡張、水晶体偏位、全身徴候)の有無および遺伝学的検査が含まれる。しかし、表現型のみで診断基準を満たしながらもショートリード型次世代シーケンス(SR-NGS)でFBN1バリアントが確認されない症例も散見される。保険診療のSR-NGS(かずさDNA研究所)で病的バリアントが確認されなかった2症例に対して追加解析でバリアントを同定できたので報告する。
【症例1】5か月男児。出生時からMS様の全身徴候、僧帽弁閉鎖不全、呼吸不全を呈した。特記すべき家族歴なし。新生児MSとの鑑別目的に遺伝学的検査を施行。SR-NGSで病的バリアントは検出されなかったが、FBN1の部分的なコピー数異常が疑われた。MLPA法でエクソン46-50にわたる欠失が判明し、サンガー法でイントロン内のbreakpointも確認された。
【症例2】20代男性。10代で大動脈基部拡張に対してDavid手術、20代で水晶体除去術。同徴候の家族歴あり。結婚を機に遺伝学的検査を施行。SR-NGSで病的バリアントなし。末梢血RNAシーケンスでスプライシング異常は確認されなかったが、FBN1のRNA量が極端に減少していた。全ゲノムシーケンスおよび皮膚線維芽細胞RNAシーケンスを行ったところ、イントロン33内のバリアントにより新規カセットエクソンが形成されていたことが判明した。
【考察】単一遺伝子疾患の遺伝学的検査の多くはSR-NGSが用いられており、エクソンおよびイントロン境界部分のみを判読されるため、提示例のようなイントロン内バリアントやコピー数異常を検出することはできない。マルファン症候群はgenotype-phenotype correlationが報告されておりバリアントを同定することは予後予測に有用である。また今日の遺伝学的検査は着床前診断をはじめとした出生前診断にも有用であり、患者のニーズに応じて次世代への影響も考慮してバリアントを究明したい。