講演情報

[II-P02-5-07]心臓MRI検査で診断された静脈異常

川口 祐嗣, 澤田 まどか, 東谷 佳祐, 提島 丈雄, 名和 智裕, 高室 基樹 (北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科)
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キーワード:

cMRI、静脈異常、先天性心疾患

【緒言】
心臓MRI検査(cMRI)は、撮像シークエンスの工夫により主要な静脈系の走行や形態を正確に評価できる。cMRIで診断された3例の静脈異常を報告する。
【症例】
[症例1]上大静脈狭窄
生後3か月、体重4.0kgの女児。左心低形成症候群(MA, AA)、左上大静脈遺残、心房間交通作成・両側肺動脈絞扼術後。生後48日の造影CT検査(eCT)では両側上大静脈(SVC)は開存していたが、生後3か月時のcMRIで右SVCの狭窄を疑い、右上肢から造影剤を投与したeCTで右SVCの閉塞と側副血行形成を確認した。
[症例2]無名静脈閉塞
生後6か月、体重5.6kgの男児。左心低形成症候群(MS, AS)、両側肺動脈絞扼術後。Glenn手術を検討し、eCTとcMRIを同日に施行したところ、eCTでは無名静脈の合流が描出されず造影剤投与経路の影響と判断されたが、cMRIで無名静脈の閉塞を確認した。
[症例3]フォンタン術後、静脈-肺静脈短絡(VVS)
26歳の男性。左側相同、房室中隔欠損、右室低形成、フォンタン術後。経時的に酸素飽和度が低下し、22歳時の心臓カテーテル検査(cath)で肝静脈から左肺静脈へ灌流するVVSを造影し、経皮的血管塞栓術を施行した。無名静脈での造影ではVVSを確認できなかったが、26歳時にcMRIを施行し、半奇静脈に起始し左上大静脈へ環流する巨大なVVSを確認した。
【考察】
先天性心疾患では静脈異常をしばしば経験し心臓超音波検査、eCT、cath、cMRIを組み合わせて評価する。心臓超音波検査は非侵襲的検査であるがエコーウインドウに制約があり、eCTやcathは造影剤投与経路や投与量、撮像タイミング次第で十分に静脈異常を描出できない場合がある。一方、cMRIは侵襲や制限が少なく主要な静脈の走行や形態を包括的に評価できる。治療計画に影響を及ぼす静脈異常が疑われる場合は、侵襲的検査の前にcMRIを実施し、造影剤投与経路や投与量、撮像タイミングなどの検査計画を立案することが望ましい。