講演情報
[II-P02-5-09]心臓MRIを用いた心膜切開後症候群の診断の有用性
○前田 昂大1, 東谷 佳祐1, 提島 丈雄1, 名和 智裕1, 澤田 まどか1, 高室 基樹1, 庭野 陽樹2, 浅井 英嗣2, 夷岡 徳彦2 (1.北海道立子ども総合医療療育センター 循環器内科, 2.北海道立子ども総合医療療育センター 心臓血管外科)
キーワード:
心膜切開後症候群、心臓MRI、周術期管理
【背景】心膜切開後症候群(PPS)は, 開心術後数日から数ヶ月後に発症し, 発熱, 心嚢液貯留等がみられる。特に, 開心術後の発熱や炎症反応の持続は創部, 縦隔炎, デバイス感染といった感染症との鑑別が臨床的に問題となる場合が多い。当センターでは両者の鑑別のために心臓MRI(CMR)を積極的に撮像し, 臨床所見と画像所見からPPSと診断している。【方法】2021年から当センターで開心術後にPPSと診断した14例について, 診療録を用いて後方視的に検討をした。【結果】男性6名, 手術時年齢15歳(0~37歳), 体重37.9kg(3.0kg~80.2kg)であった。診断はTOF 6例(42.3%), ccTGA 2例(14.3%)で, その他TA, DORV, DOLV, AORCA, VSD, RPA absentが各1例(7.1%)であった。術式はre-RVOTR 5例(35.7%), Ozaki procedure 3例(21.4%), その他EC conversion, MPAB+PDA ligation, RPA-MPA bypass, RCA plasty, VSD closureが各1例(7.1%)で, 手術時間は平均313±80分(92分~442分)であった。術後からPPSの診断までは平均11±4日(6日~20日)で, 発熱は6例(42.8%)で認めた。治療はアスピリン(ASA)+利尿薬 6例, NSIADs 3例, ASA+プレドニゾロン(PSL) 2例, ASA+PSL+利尿薬 2例で行い, 診断から退院までの期間は平均10±10日(0日~44日)であった。心嚢液貯留や心膜肥厚は, CMRでは全例で検出したが, 心エコーでは8例に留まった。【考察】開心術後の発熱は, 感染症との鑑別が問題となり, 漫然とした抗菌薬の使用や入院期間の延長につながる。PPSを疑った場合でも, 術後はエコーウィンドウが制限され, 適切な画像所見が得られないことがある。術後再出血のリスクや易感染性の観点から, PPSと確定診断ができない場合には, ASAやPSLの使用は躊躇される。CMRを使用することで心嚢液の分布, 心膜肥厚や信号変化を明確に捕え, PPSの診断と治療に繋げることが可能であった。【結語】CMRの併用はPPSと診断し, 術後管理において治療方針の一助になり得る。