講演情報
[II-PPD2-1]当院での両側肺動脈絞扼術を先行した左心低形成症候群の治療成績
○小嶋 愛1, 花岡 優一1, 細谷 裕太1, 小沼 武司1, 淺野 聡2, 志水 利之2, 澁谷 悠馬2, 米原 恒介2, 赤澤 陽平2, 武井 黄太2, 瀧聞 浄宏2 (1.長野県立こども病院 心臓血管外科, 2.長野県立こども病院 循環器小児科)
キーワード:
両側肺動脈絞扼術、左心低形成症候群、フォンタン
【目的・方法】当院では左心低形成症候群(HLHS)に対し2003年9月以降全例両側肺動脈絞扼術(BPAB)を先行する方針としている.1999年4月から2023年4月までにBPABを先行したHLHS 39症例の治療成績について後方視的に検討した. 【結果】平均観察期間は9.8年.BPAB施行時期は日齢平均7.4日,平均BW 2.7kg,BPAB後早期死亡2例,遠隔死亡2例.Norwood (NW)もしくはNorwood(NW) +BDG(両方向性グレン術)に到達した症例は35例(89.7%),うちNW施行は23例,BPABから平均68日,平均BW3.8kg.NW施行症例のうちBDGに到達した症例は18例.BDGまでの早期死亡はNW(BTS)で2例,遠隔死亡なし.NW(RV-PA)での早期死亡2例,遠隔死亡1例であった.NW +BDG症例は12例,BPABから平均122日,平均BW5.0kg,早期死亡なく,遠隔死亡は1例であった.Fontan到達は24例(61.5%),NW群のFontan到達は13例(72.2%),NW+BDG群のFontan到達は11例(91.6%).平均年齢3.4y,平均BW 10.9kgであった.Fontan術後早期死亡なし,遠隔死亡2例.肺動脈への手術介入はNorwood~BDG: mBTS2例, BDG時:PA angioplasty 6例,BDG~TCPC 7例(PA angioplasty4, 血栓除去3,BTS 3),TCPC以降は2例(8.3%: PA angioplasty 1,血栓除去 1)であった. TCPC後Follow up 期間は平均10.6年.遠隔期心カテーテル検査では平均SpO2 91%,RVEDVI 112%N,RVEF 48%, PAI 172mm2/m2,CVP 13mmHg,LA7mmHgであった. 【考察】BPABを先行した症例のTCPC到達率は61.5%であり遠隔期にSpO2 90%以上,CVP12mmHg以下の良好なFontan循環を獲得した症例は7例(29%)であった.NW+BDG群では9割がFontanに到達可能であったがNW+BDG後早期に肺動脈閉塞や血栓に対する手術やカテ治療が必要な症例が多くそれらの症例は遠隔期において良好なFontan循環を獲得できていなかった. 【結語】Bil PAB後遠隔期で良好なFontan循環を獲得できている症例はいまだ少なく,肺動脈形態のみならず大動脈形態も含めた治療戦略が必要である.