講演情報

[II-PPD2-6]左心低形成症候群両側肺動脈絞扼術後症例の遠隔期成績

重光 祐輔1, 近藤 麻衣子1, 福嶋 遥佑1, 平井 健太1, 川本 祐也1, 原 真祐子1, 馬場 健児1, 小谷 恭弘2, 笠原 真悟2, 金澤 伴幸3, 岩崎 達雄3 (1.岡山大学 小児科, 2.岡山大学 心臓血管外科, 3.岡山大学 麻酔科蘇生科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

左心低形成症候群、両側肺動脈絞扼術、複雑心奇形

【背景】当施設では、Norwood手術(N術)のリスクが高い左心低形成症候群(HLHS)およびその類縁疾患(HLHS variant)に対し、両側肺動脈絞扼術(bPAB)を先行しているが、その遠隔期成績は明らかではない。【目的】bPABを先行したHLHS/-variant症例の遠隔期成績を明らかにすること。【対象と方法】当施設でbPABを行うようになった2005年から2024年までの20年間で、N術を行ったHLHS/-variant症例について、1st palliationがN術であった群(N群)と、N術にbPABを先行した群(B群)の2つに分け、遠隔期成績を比較検討した。【結果】期間中、120例にN術を施行。診断の内訳は、HLHS 99例、variant 21例。N群71例、B群49例。bPAB先行理由は、低体重(<2.5kg) 21例、ショック 8例、心房間交通狭小/閉鎖 7例、心外奇形 6例、TAPVC/Cortriatriatum合併 4例、重症三尖弁逆流 3例、早産(<35週) 2例 (重複あり)。B群の体重(kg)は、bPAB時の2.5[2.3-3.1](中央値[四分位範囲]、以下同様)から、N術時の3.2[2.8-3.5]へ有意に増加(p<0.01)。bPABからN術までの期間(絞扼期間、日)は53[31-73]であり、絞扼期間とFontan手術(F術)前PA indexの間には負の相関が認められた(p<0.01)。なお、F術到達率は、N群で高くなる傾向があった(N群 69%、B群 61%、p=0.43)。N術後3カ月における早期生存率(N群 94% vs B群 96%、p=0.83)、10年生存率(N群 76% vs B群 73%、p=0.82)に、いずれも有意差はなかった。PA indexは、Glenn術前、F術前の各タイミングいずれにおいてもN群で大きくなる傾向があった。【結語】bPABにより、高リスク症例においてもN術の良好な成績を得ることができたが、長期にわたる絞扼は肺血管床の発育に悪影響を及ぼす可能性があるため、F術到達やその後の合併症回避を目指し、絞扼期間をできるだけ短くできる治療戦略をとる必要がある。